KojiTakeuchi

演者のKojiTakeuchiのレビュー・感想・評価

演者(2020年製作の映画)
4.7
男を徴兵で取られすでに崩壊している家父長制の家族の中で、残された義理の姉妹が、戦時下のそれぞれの思いの上で「演じ」ながらそれでも家族であり続けるのか、地域の中で戦時の社会に関わり続けるのか、選択を問われているかのような作品。
前半は原作の演劇的な間に家族であることの喜びを感じるが、だんだんと「現実」が映画的な間の中に映し出される。
戦時はやはりこのように女性中心の家族が多かったのかもしれないし、男性が少ない中で互いに支え合ってきたのだと思う。私の祖母も伊勢湾台風まで姉妹と母と婿と子どもたちの大所帯で支え合って生きていたと聞いていたから、その感覚が身近に感じた。
なにより支え合って生きていくために当時の女性たちは家族を持続していくという形を選択したのではないか。そしてそれはある意味で戦後復興の下地にもなっていたのだと思う。
しかしやがて、そして今、独り立ちしても無理が生じない社会の中で、私たちは演じることを客観的に見ることができるようになったのかもしれない。それをさらに映画というメタの空間で見ることで批評を加えられる。あるいは戸惑いを口にできる。
そうやって、常に演じることを考えられる時代であれるといいなと思う。