『アリー/スター誕生』においても感じたことだけど、クーパーはどちらかを“分けて”描いていませんね。常に二人を同じカットに置いて並行させていく。だからある意味片時もヒリヒリが収まらない。加えてレナードとフェリシアの会話パートの「カットイン」はこの映画で最大のサスペンスと摩擦です。
加えてコントロールによる磨耗と磨り減りが避けられない後半のレナードとフェリシアが痛ましく、クーパーとキャリー・マリガンの不安定な精神が確実に悪化していくお芝居に驚嘆で、終盤の二人が見せたお芝居には感動です(何がとは言えないけれど非常にエモーショナルです)。しかもマリガンの吹替を担当した水樹さんもまるで劣らぬパフォーマンスを見せていたのが最高です。
監督二作目で振り幅をさらに広げる演出やカメラワークの流麗さ(まさかマシュー・リバティークが撮影なんて最高か)…もはや名画の域ですが、(レナードかフェリシアか両方を描きたいのか)焦点が掴みかねるところは賛否両論です。
いつかブラッドリー・クーパーはヒッチコックが手掛けそうなサスペンスを手掛けて欲しい。間違いなく強烈なサスペンス映画にして、ヒッチコックも描けなかった作品になると思う。