イワシ

こどもが映画をつくるときのイワシのレビュー・感想・評価

こどもが映画をつくるとき(2021年製作の映画)
4.4
2020年12月に宮崎で開催されたワークショップ「こども映画教室」の活動を捉えた井口奈巳のドキュメンタリー。こども達は赤青の2チームに分かれ、それぞれ商店街と宮崎神宮で撮影し始めるのだがその様子はまるで「サスペンス」と「アクション」をテーマに2部構成になっているかのようで非常に興奮した。とくに好きなのは「アクション」担当の宮崎神宮でカメラを回す青チームの撮影風景。そこで頻出するのは「投げること」と「樹木」。つまりジョン・フォード。集団から離れたこどもが退屈しのぎに石を投げ、音を取るために池に石を投げ込み、必要な画のためにプロデューサーと交渉し購入した鯉の餌を橋の上から投げる。そんなこどもらしいこどもたちはワークショップ最終日に撮影した素材を見ながら編集作業をするのだが、その顔がまさしく映画製作者の顔にしか見えない。この驚愕。ただしその顔がこどもらしからぬというわけではなく、むしろ映画をつくった者だけに現れる年齢を超越した顔になっている。暴論を承知で言ってみるが、ペドロ・コスタ『あなたの微笑みはどこに隠れたの?』のストローブ=ユイレに最も近い映画製作者はこのこどもたちなのではないかと思えてくる。
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