ガンギマリポテト

ニモーナのガンギマリポテトのレビュー・感想・評価

ニモーナ(2023年製作の映画)
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予告編を見て「約束された傑作」とすら思って配信を楽しみに待ってはいたが、蓋を開けてみれば微妙...という久々のパターン。
ポスト・トゥルース時代のクィアエンタメとして期待出来る要素はほぼ全てといっていいほど詰まっているはずなのに、“要素”でしかない。“置いていった”感が隠しきれていない。(無論、置いてくれただけで十分ありがたいものなんだが...)
ニモーナのキャラクターは最高にキャンプなのに、映画自体は後半になるとキャンプさを嘘みたいに失ってしまう。ずっとふざけていられるトピックではない、というのは分かるんだが、いささかON/OFFの切り替えが下手。
自己犠牲的なクライマックスもモヤる(『怪物』みたいにはならなくて良かった!)し、1人の差別主義者を力でねじ伏せたところで社会の差別構造は変わらないワケで、根本的な解決にはなってない...っていうのは作り手の意図の範囲内?
ニモーナが“英雄”になる様を見せるなら、市井の人々の変化が荒唐無稽過ぎやしないか...?結局、マイノリティは役に立たないと認められないんすか...?
ニモーナはやたらメタルに傾倒しているんだけど、そこもただ”付けられた設定“感がしてしまい、文化へのリスペクトとしても微妙。
あと、こないだの『アントマン』でも思ったけどクリストフ・ベックは盛り上げるの下手すぎ。

ていうか、映画自体のメンタリティはメタルやパンクよりグランジ的だよね。


要素要素は好きなんだが、映画としての疾走感や盛り上がりに欠ける。
本当に勿体無いとしか言いようがない。

『怪物』に感動した人たちはこの映画を10,000回ぐらい観てくれ