柏エシディシ

ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男の柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
1963年、キング牧師のあまりにも有名な演説の舞台となり、人種差別撤廃運動の象徴となっていくワシントン大行進の実現に大きく貢献をした運動家バイヤード・ラスティン。
浅学のためその人物名と功績を知らなかった。
本作では、単なる偉人としてではなく、過ちも矛盾も抱える一人の人間としてバイヤードを活写しており、だからこそ、人種と性的志向という二重の差別に苦しみ、それに抗おうと葛藤する姿に胸打たれる。
コールマン・ドミンゴの、エネルギッシュで時にユーモラスなバイヤードは魅力的だ。
バイヤード・ラスティンだけでなく、あの歴史的瞬間には、表舞台にその名は残らなくとも、その意義を信じて、身の危険を顧みずに活動していた人たちがいる事にこの映画は改めて気づかせてくれる。
差別撤廃への思いは同じなれどイデオロギーの違いで一枚岩になれないリーダーたちや、大規模の運動を実現する為の細かい過程など、教科書では知り得ない事実のひとつひとつも面白い。
特にこういう活動への理解や実現が希薄な国に生きている人間としては、こういう映画から教えて貰うことは多い。
ブランフォード・マルサリスによる劇伴が素晴らしく格好良く、激動の時代の躍動感と登場人物たちの不断の意志を彩っていく。必聴。
柏エシディシ

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