ロアー

囚われし者 ボーラーのロアーのレビュー・感想・評価

囚われし者 ボーラー(2023年製作の映画)
3.6
特殊部隊隊長のダイアナは、腕を負傷しながらも犯罪組織から大量の麻薬を奪うことに成功する。しかしその報復として警察長官の退任パーティーの酒に薬を盛られ、怪我のために酒を断ったダイアナ以外の警官全員が意識不明に陥ってしまう。
ダイアナの命と麻薬の奪還を狙った犯罪組織が襲撃を仕掛けてくる非常事態に際し、ダイアナはやむを得ず、手錠で拘束されていた謎の男を運転手として解放し、瀕死の警官たちをトラックで運びながら麻薬を隠した警察署へと急ぐが...

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タミル語映画「囚人ディリ」のヒンディー語リメイク。

オリジナル版である「囚人ディリ」のキャッチコピーが"アクション映画3本分のスリル"だったので、当時の感想に「アオラレ」「96時間」「スピード」で3本分って書いたんだけど、この「囚われし者 ボーラー」は様子のおかしい「マッド・マックス」、様子のおかしい「アクアマン」、様子のおかしい「モータル・コンバット」で3本分の様子のおかしさだった。

覆面バイクがデコトラの荷台にビュンビュン飛び乗ってきた時点でおや?と思い始め、それを素手でいなすアジャイさんこと主人公ボーラーにおやおや?となり、そこから先はもう、見た目からして変な連中が道を塞いできたり(「マッド・マックス」)、謎のトライデントが登場したり(「アクアマン」)、素手の攻撃で背骨を飛び出させてたり(「モータル・コンバット」)。大枠の展開は確かに「囚人ディリ」なのに、とにかく全ての様子がおかしかった。

でも実は、トライデントについてはポスターの時点で変だって気づいてたんだ。ポスターでアジャイさんが持っていたあの殺傷能力の高そうなトライデント。入手方法は「RRR」のラーマみたいなアレなので、主人公を神に見立てて無双させることがままあるインド映画的には全然アリな展開なんだけど、このトライデントが本当に殺傷能力が高くて、横から顔にブッ刺してたし、ケバブして自重で貫通させてみたり、まあ、つまり人体が豆腐みたいな柔らかさになる現象が起きてて、この映画ってもしかしてR指定があったのかな?

それなのにボーラーは度々"普通の男"って言い張るんだよ。
致命傷でも死なないし、インド映画フィルター越しでも明らかに許容オーバーな人外戦闘をしてたにも関わらず"普通の男"って。
しかも、魔法や破壊兵器を使わずしてここまで大量虐殺というか殲滅?していたキャラを少なくとも私は他に知らなくて、「囚人ディリ」で「すげ〜!」って興奮したハズのシーンでむしろ「うん、あの、すごいですね...はい...」と引いてしまったほど。帰りながら思わず「囚人ディリ」のそのシーンを確かめたら、「ボーラー」の方が100倍くらい多く殺してたように見えた。あの状況で敵もなぜ自ら死に向かって行くんだろ?しかもそれを「RRR」で「一発の弾丸の価値が〜」って言ってて泣かされたあのアジャイさんがやってるものだから、余計に乾いた「アハハ」って笑いが漏れ出てしまった。

こんなこと言ってるけど、別に面白くなかった訳じゃないんだ。
でも本当に何もかも様子がおかしくて、一体何を観せられたんだろう?感がすごい映画で、そしてどうやら続くらしい。
どう見てもアメコミ映画じゃないと出てきちゃいけないビジュのヴィランが登場してたし、この映画はどこに向かって行くんだろうか?
しかも映画が始まってから気づいてたけどこれ《アジャイ・デーヴガン・フィルム》が制作していて、監督もアジャイさんで「え、アジャイさんて本当なこういう映画が好みだったんですね。え、え〜意外〜...」みたいな。まだまだインド映画初心者なので、上司の意外な一面を見てしまったような心境。なんかアジャイさん、お家で「荒野行動」とかで遊んでそう(ど偏見)。

そして、「囚人ディリ」で敵役を演じていたアルジュン・ダースも割とセクシーさん枠だったのに、それを超える様子のおかしい狂ったセクシーおじさんが出てきて、私の情緒も映画と同様に様子がおかしくされた。
あんなビジュで弟キャラで、でも案外年とってるな(むしろ刺さる)と思ったら「ヒンディー・ミディアム」でひたすら良き隣人を演じていたディーパクさんで、ホントまさかこんな...だって、アルジュン・ダースの枠にアルジュンより20歳も年上で50歳近いあざといセクシーおじさんキャラをぶつけてくるとは普通思わないじゃん。アイメイクに目元タトゥに小指に派手なネイルまでしててさ。完全に油断してて、背中からブスブスと性癖を刺された。
登場シーンからして、セクシーなダンサーさんと同じダンスをしながら仲間を滅多刺しにしててもう、そんなの見せられてどうしたら...
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