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コット、はじまりの夏のたのネタバレレビュー・内容・結末

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「2024年公開映画現状ベストNO.1作品」
この映画を見終わったあと、親という存在は、子どもから自分の親だと認められることでようやく親になれるものだと思った。産んだら即親になれるわけでは毛頭ない。
この作品には2つの家庭が描かれる。
1つは主人公コットの家庭だ。抑圧的かつ無関心気味に家族と関わる父、そんな夫に対して諦めついている母、ギスギスした夫婦仲で十分に愛情を注がれているように見えない4人姉妹。こうした緊張と不安のある環境のなかで、もともと物静かなコットは、自分の気持ちを無意識に押さえて、より寡黙になっていったのであろう。寡黙故にコットは周囲から孤立して居場所がない。
それに対してもう1つが、遠い親戚のキンセラ夫婦だ。妻アイリンはとても優しくかつ丁寧にコットに関わる。家事の手伝いを強要することはなく、ただそこにいてくれるだけでいいという雰囲気がある。夫ショーンは当初は無口で愛想のない中年男性に映って見える。かといってコットに無関心ということはなく、少しずつ交流を重ねていくうちに互いに心を開くようになる。牛小屋のモップ掛けの速さを競い合ったり、郵便受けから家までの往復を毎日測ったりと日常を楽しみ合う。ここで見せた走りがポスターそしてクライマックスの伏線となるとはつゆ知らず…
この2つの家庭の意図された対比は随所に至る。もともとの家庭は電灯がなくどこも陰っていて暗い室内。対してキンセラ夫婦の家は電灯のぬくもりが感じられる色味、日差しも眩しすぎずどこか安らぎを感じるような自然光。コットの表情が自然と・次第に明るくなるのも必然であった。
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