さんぷる

コット、はじまりの夏のさんぷるのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
4.6
主人公コットと親戚夫婦がなんてことのない日常を通じて心通わせていく様が、最小限のセリフでありながらもその素晴らしい撮影によって色鮮やかに瑞々しく、豊穣に描かれる。
食卓に置かれたクッキー、寝室の壁紙に描かれた列車、グラスに注がれた赤い紅茶、黒い郵便受け、なんて事のないものが温度と質感を持って細やかに映し出されることで暖かく、愛おしく感じられる。また、不快なノイズとリアルなセットで伝わってくる実家や学校の息苦しさと、預け先の穏やかな日常の対比が素晴らしく、心を掴まれる。
人との触れ合いの中、一人の人間として愛をもらった記憶が主人公コットの心に刻まれる様子は自身の幼い頃の記憶を引っ張り出させれているようにも錯覚してしまった。
クライマックスまでの高まりとあのセリフによって感動が最高潮に達しての終幕と、素晴らしい95分だった。
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