あづんだ

パスト ライブス/再会のあづんだのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

フィルマークス試写会で鑑賞@渋谷ユーロライブ。

ありていの「松ぼっくりに火がついた」系のテイストかと思いきや、その予想を裏切られた。
地味で眠たくて、退屈で、奇妙で、リアルで…。なんか気づけば忘れられなさそうな一作品になってしまった。
ラスト5分のたたみかけがすごくて、この5分間で、この映画への「忘れられなさ加減」がすごい膨れ上がっていくという稀有な映画体験をしました。

初恋は実らぬものというけれど…。

実らなかった恋を、長い歳月かけて自分勝手に熟成させて、客観的にはなにやら気色の悪いものに成り果てるのだが、自分自身にとってだけはスタンダール曰くの結晶作用=崇高なものに出来上がっている。ヘソンにとってのノラはまさに、そんな感じですよね。ヘソンの成就しない恋心ってのが、物語の主軸になっている。
それは幼さをはらみ、切実で痛々しい。
ヘソン演じるユ・テオの「まなざし」はほんとに見事で…。
唯一無二の恋の可能性を探るまなざし。
この映画の核を支えるのは、彼のそのまなざしなのだと思うくらいに、すごい。すごい演技だった。
一方、ノラの貼りつくような不気味な笑顔は、実は単なる「鎧」であるのだということが、ラスト15秒で解らされた。それもすごいし、サブリミナル的に、ほんの一瞬だけ挿入される幼少期の別れの一場面こそが、この映画の肝ではないか。
別れ際、24年前は彼はなんと言った?
その言葉が繰り返されると観ている誰もが思う、それに対しての裏切り。
でも、きっとリアルでは現実ではそっちが本当だよね。だからこの映画は、神様の視点で描かれたものなんだと思う。
ラスト5分の中にはさらに、どんなアクション映画も及ばない「2分間」(およそ)が含まれている。
観ている観客のうち、おそらく100人中99人は2人はここで○○をするはずだと思うよ。

「ラスト5分が秀逸過ぎる映画10選」にランクインしてしかるべき、恋愛映画の傑作だと思いました。リアルってこんなもんだよね。
こんなもん、でも尊いものは尊い。
観たあとにじわじわと、自分の中での存在感が膨張していく映画。
あづんだ

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