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パスト ライブス/再会のAyaxのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.4
試写会で鑑賞。
A24かつアカデミー賞ノミネート作品ということで期待値上がってしまう。結論から言うと、期待値上がり過ぎたのもあるけど、ピンとこない作品だった。残念。
大人の恋愛映画と言われればまあそうだけど、あれ、これで終わり?という呆気なさ。短いのは良いのだけど。
恋愛映画であり、移民の話でもあるのだと思う。だから日本人でずっと日本に住んでいる自分には共感しづらかった。
韓国からカナダに移住して、現在はニューヨークで生活してるノラがこなれた格好をしてるのに対して、ヘソンの何とも言えないもっさり感が生々しい。
複数人で話してるとき、一人だけ言語が違う人が浮いてしまう現象。わかる。めちゃくちゃいたたまれない。アーサーは寛大すぎる。
アーサーとノラの会話は、素敵な瞬間を切り取って、おしゃれな言葉でそれを表現する。それは普通の会話だったらないわーって感じなんだけど、作家夫婦だからなくはないかも?と思わせる。
そして、ニューヨークの街の切り取り方も美しくて、韓国人を主人公に据えながらちゃんとニューヨーク映画。
ちなみにヘソンは英語がほとんど話せない設定だけど、演じたユ・テオさんは普通に英語話せるらしい。

〈以下、ネタバレに言及〉
ノラの最後の涙の意味を考えた。
1.初恋の相手に再会して、全くときめかなかったわけではなかったけど、今の生活を捨てて彼と生きる選択はないなと結論がでてしまった。それに対して、彼の気持ちは自分に向いていて応えることができない。大切な思い出であることには変わりないけど、運命ではなかったと気付いてしまった。
2.もし移住せず韓国に住んでいたら、もしアーサーに会う前に再会してたら、ヘソンと生きる選択もあったのかもしれない。
3.ヘソンは韓国(故郷)のメタファー。ヘソンと生きる選択がない=韓国人なのに韓国に戻ることは二度とないのだろうと気付かされた。
このあたりの感情が全部混ざって泣いてしまったのかな。この辺は観る人によって感じることが違うかも。
観た後に、登場人物がどんな気持ちだったのか考えるので、そういう意味では楽しめた。
〈追記〉
切ないっていう感想に同意できなかったんだけど、12歳の自分との別れでもあるという感想を読んで、それについては納得。惚れたはれたの話ではなく、故郷とか韓国人としてのアイデンティティの話だと思っている。あと音楽は確かに素敵。
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