ポルノ映画版『タクシードライバー』というありそうで無かった作品(それに近い作品はあったような気がする)、そもそも『タクシードライバー』ではデ・ニーロがポルノ映画館に居ることを癒しとしていたので親和性は高いと言える。
『HERO』でブレイクする寸前の田中要次が主人公を好演、ただリメイク元では主人公はベトナム戦争で精神のバランスを崩したという設定になっているのに対してこちらは当時の日本で話題になっていたリストラされタクシードライバーに(しかもそれが原因で恋人と別れている)なったという設定のため狂気よりも悲哀が強くなっている。
狂気を背負った男が売春婦の少女と遭遇したことで更に暴走するという本家とは違った、思わぬトラブルで転落した男が売春婦を救うために敢えて拳銃を使い暴力団に立ち向かおうとするというこちらの内容も日本風に解釈するとこうなるのかという味わいもあってそれなりに楽しいけれど、本家にあった「童貞ゆえの勘違い」が皆無のためルサンチマンゆえの悲劇というテーマが薄まってしまいドラマが平面になっている部分も。
それでもあのよくドラマや映画で見かける走っている車を窓越しから撮った映像(ああいうのは普通車をレッカーみたいので吊って動かさずにさも走っているように誤魔化して撮っているのだけれどそれをやっているのだろうか)や、新宿など繁華街でロケを敢行したりしており見ごたえはある。あと銃の扱いに長けていたからこそ出来た終盤の大殺戮を、銃をろくに扱ったことがない人間がやろうとするとこうなるという間抜けだけど現実から出ることが出来ない平凡な人間であることを痛いほど強調する終盤の笑える切なさ。
惜しむらくはジョディ・フォスターのような魅力的な美人が登場しないこと、まあポルノであれだけの美人をキャスティングするなんて至難の技なのでしょうがないと言える。
