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クリスマス・ブラッディ・クリスマスのdemioのレビュー・感想・評価

4.0
おもしろい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

クリスマスの夜サンタクロースに殺人をさせるなんて過去何本フィルムになったことをまたいまさら撮るのか、もしや配信スルー用の小ネタかと危惧しても、ジョー・ベゴスが、いやはやすみません。でも大丈夫です。サンタめちゃくちゃ強くしたんで。ありえないぐらい強いサンタにしたんで、と優しく語りかけてくれるような圧倒的強さと陰惨さを持ったサンタの人体破壊ホラー。
カップルがタランティーノ映画のようにダラダラと好きなヘビーロック音楽について互いの趣味を語り合うとき、劇場の立体音響のうち後景からヘビーロック音楽がうっすらと聴こえてくるが、彼らの語らいが無音化し、これこそ聴けというヘビーロックが全面に出てきて低く鳴り始めたとき、花火を打ち上げるように陰惨なサンタの殺人シーンが開始する。
つまりホラー映画で殺人の場面が観られることと、クールな音楽を聴けることは、ベゴスにとって合流しうる同質の快感である。確かにホラー映画とヘビーロックはよく近似領域に見られている。(ジョー・ベゴス本人がそうであるように)ホラー映画好きの中年はよくロックTを着る。それら2つのジャンルは快感が近似していることを、その近似の仕方を(俺のようにヘビーロックに親和的感性を持たない)観客に理解させようとする映画だった。
画面に登場する者たちが10分に一度のペースでことごとくサンタに殺されていくうち、主人公の女だけはその役割どおり最後まで生き残る。彼女はペットセメタリーは2がよく、ヘルレイザーは3がよいと言う。ハロウィンや13日の金曜日ならバージンの女性(サバービアの閉塞的キリスト教道徳に適うもの)に生き残る正当性を与えるが、今作では映画と音楽の審美眼がもっともすぐれた女にその正当性を与える。しかし最後もう彼女が生き残ることが自明になったとき「調子に乗るなよ」と言わんばかりに指を欠損させる。ヒロインに返り血でなく自分自身の血で不潔に追いやる。こうスクリームクイーンに釘を刺すのは、ハイテンションやホーボーウィズショットガン以降のVHS世代のホラー作家の手管だが、いまやその世代的潮流が弱体化しつつあって久しい中、ジョー・ベゴスが一人格闘してくれている。
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