青山

ソウルメイトの青山のレビュー・感想・評価

ソウルメイト(2023年製作の映画)
4.2

奔放だが繊細なミソと生真面目なハウンは、小学生の頃に転校生として出会って以来お互いに1番大切な存在として一緒に生きてきた。しかしハウンがジヌと付き合うようになり、やがて2人の人生は別々の道へと枝分かれしていくが......。


ジャケ写だけ見てなんか綺麗な女の子が2人出てくるみたいだから観るか!くらいのとても安直な気持ちで観に行ったがめちゃくちゃ良かった......。

なんつーか、冷静に考えると筋立てだけならマ〜ジでベタな話なんですよね。言い方悪いけど最初から最後までどっかで観たことあるような展開が続く感じ。
でも観ている間はそんなことを露ほども感じずに没入して「にやにやほくほくえっえっああ、あっあっひえ〜あ、にやにやあっあっあっ〜!!!っふぅ、、はっ!?ええ〜っ、って、えええ〜っっっ!?う、うわぁ〜〜!!!😭」という感じで感情を鷲掴みでJET COASTさせられてしまうのはあらすじにはまとめられない映画というものの魅力!

とりあえず冒頭で大人になった主人公のミソが、今より少し幼い顔立ちの自身を描いたどデカい写実画の前に佇んでいて、どうやらこの絵の作者のハウンは現在行方が分からないらしい......という、一枚の絵から立ち上る謎に引き込まれてしまう。何より絵に描かれたミソの魔性の美しさに惹きつけられる掴みがバッチリ。
そしてそっから回想の形で入っていく小学校時代のエピソードに体験したことないのに強烈なノスタルジーを感じて泣きそうになり、高校時代のThe青春という最高の日々が最高すぎてにやにや不可避でもう最高!昔の音楽、ウチら世代にはドンピシャ懐かしいダンスダンスレボリューション、スクーター、ピアス、ケーキ、全てがキラキラ輝いていて最高でもはや「エモい」の定義みたいな映像であることよ。奔放だけど繊細なミソと、生真面目で堅実なハウンの対比も良い。
2人が暮らす島も、家から海が見えるような良いロケーションで、ソウルに出ようとしたり(日本で言う上京?)海外に絵の修行に行こうとするのがもったいなく思えるくらい綺麗な場所でした。

この辺までは、まぁ普通に親友同士の仲良しエピソードを見せられてる感じなんだけど、ハウンがジヌというイケメン(めっちゃ背が高くてびびった)に恋をするところから2人の関係がぐらつきはじめる......というのはまぁよくある展開なんですが、そこに「絵」という夢を追いかけたいミソと、堅実に生きようとするハウンの相違もあって2人が道を違えることになるのが切ない。

......そして、中盤からは2人が離れてそれぞれの生活を送る様が描かれます。
金にならない夢を追いかけることの過酷さと、夢を捨てて地元で生きる味気なさ。
元の性格に加えて、こうした生き方の違いが加わって、もはや再会してもかつてのような関係ではいられない2人が悲しいけど、これだけ違う世界に生きてもはや憎み合うようにさえなってもお互いがいつも自身の中心にいることで、ただのマブダチだった思春期の頃よりも強い「ソウルメイト」という絆を感じさせます。

そして終盤での出来事はネタバレになるので詳しく言えないっすけど、涙なしでは観られない......。
ちょいちょい人生の伏線回収みたいなことが起こるのが、むしろ技巧に走ってる感じがしてちょっと蛇足な感じはしますが、2人の秘密が明かされる場面には驚かされたし、そっからのラストシーンがあれなのも泣けるよね......。
という感じで、小学生の頃から大人になるまでの2人の関係性の軌跡をぎゅぎゅっと詰め込んで追体験できるめっちゃ濃密なお話。
旅の途中で暮らした場所、2人で遊んだ場所、実家、ライブハウス......作中に出てくる全ての場所が、そこで起きたことがたとえ悲しいことだろうと関係なく思い出になっていくのが素晴らしい。観終わってからもふと場所の記憶とともに思い出のように内容を思い出して、また観たくなってしまう、そんな素敵な映画でした。
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