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ビヨンド・ユートピア 脱北のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.1
【壮絶で不気味な逃避行】
第96回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされそうな作品『ビヨンド・ユートピア 脱北』。2024年の映画館初めはこの壮絶な脱北ドキュメンタリーから始めたのであった。

近年、カメラが小型化し今まで観ることのできなかった社会の暗部のありのままを目の当たりにすることが増えてきた。難民の国境を超えていく様子を捉えた『ミッドナイト・トラベラー』、同性愛者が迫害されてしまうチェチェンからゲイを救助しようとする様子を捉えた『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』が記憶に新しい。これらと比べると、脱出描写は手ブレが激しく、暗闇での撮影が多いので明確な画を追うのが難しい。しかし、それを補うように北朝鮮の歴史(日本が明確な原因となっていて申し訳なくなる)、音声データが挿入されることで、一家の脱出劇に不気味さが宿る。それは、いつ捕まるかどうか分からない、そして敵が誰か分からない不気味さにある。ブローカーも信頼できない。いつ裏切るか分からない中、車に乗り込み、涙するように感謝するが、それが仇となって弱みを握られる事態に陥らないかとハラハラしながら映画に釘付けとなるのだ。噂通りアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート有力候補作なのは間違いない一本であった。
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