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ビヨンド・ユートピア 脱北の中のレビュー・感想・評価

3.5
世界で唯一の共産主義国である北朝鮮。
脱北者は概念上じゃない現実にある場所として「ここではないどこか」を目指してる。

現代で現実に起こってることやと理解できるのに、自分の世界と接してるっていまいち思えへんかった。
彼らに対する憐れみとかやるせなさはすごい感じるけどフィクションで感じるものと大差ないのが虚しかった。
一方で、核兵器に対する恐怖は確かにあってJアラートが鳴ったときめっちゃ怖かったのを思い出した。

脱北者が故郷に想い馳せてやるせなさを感じてるシーン。
事前に分かってたことやのにええ人ぶって嘆いてるだけやん、感情に浸って気持ちよくなってるだけやん、とか冷たく思ったりもした。
個人としては嘆くしかなくて、北朝鮮っていう大きな枠組みに支配された不運な人なことは間違いないけど、そこから逃げて被害者面してるのは違うやんって。
けど、子供が泣いてる世界はやっぱり間違ってるし、笑える世界を大人が作らんとあかんやんな。
脱北して活動家になってる人が言ってた「比べることでしか幸せを感じひん」状態は絶対におかしい。

北朝鮮の価値観が抜けへんおばあちゃんは不憫やわ。独裁者を心から崇めてる様子でしつけられてる感が強かった。北朝鮮にいる息子を想い続けて脱北させようとするお母さんも根本的には同じ。
心が北朝鮮につなぎ留められてる。脱北してユートピアに辿り着いても過去の不幸が消えはせん。
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