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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のshbsbzjisのレビュー・感想・評価

4.5
戦争は国、街、建物とあらゆるものを破壊するが、当然ながら最も悲惨なのは人々の命が奪われることだ。そこは、生きるために殺さざるを得ない状況であり、その意味では敵も味方も関係なく、最も重視されるべき観点である。

「誰が悪いかは知らないが」という確かウクライナ市民の言葉が印象的だ。利益も正義も人によって異なるのだから、誰が正しくて誰が間違っているとかは問題ではない。あらゆる思惑よりも、ひとりひとりの人間の命を守ることが唯一にして最も根源的な理念であるべきではないか。

マリウポリの事態を見てもわかるように、戦時下ではどれだけ練られた国際法もあったもんじゃない。「戦時下の規則」も必要かもしれないが、どれだけ悲観的な世界であろうと「戦争を発生させないための努力」を続ける必要がある。

翻って日本として考えると、武器輸出、軍事費の増加、果たしてあるべき方向に向かっているのだろうかと考えると。「この戦いを止めるためにパパは何をしたの?という質問に対する答えを持っていたい」という監督の決意は決して戦時下を生きる人々のみのものであるべきではない。平穏に見える自分が過ごす日々も、この悲惨なマリウポリに繋がり得ることを十分に自覚した上で、自分としてもこの質問に対する答えを用意するための努力を続ける必要がある。

最後に、マリウポリの人々のため、今後の平和な世界のために、身を捧げて映像を撮り届け続けた彼らに敬意を表する。

【追記】
何気に衝撃的だったのが、冒頭の侵攻以前の露ウ対立の出来事の紹介で、自分が認知していたのがクリミア危機くらいであったことだ。外の我々はまるで2024年2月の侵攻から戦争が始まったと思っているかもしれないが、彼らにとっての戦争はここ数年の話ではないのだろう。今現在も、私や国際社会が認知していない争いが発生していて、認知していない死者が出ている可能性があることに自覚的であり続けなければならない(この示唆は、国際社会では、脅威の「認定」は安保理が実施するのであって、存在することとそれが認知されることは同じではないことからも明らか)

その他メモ
* 略奪
* good people better, bad people worse
* 人的被害↔︎物的被害(国も)
* 「普通の生活を送りたいだけ」↔︎「ウクライナ人として生きたい」「ロシア人にはなりたくない」←ただのナショナリズム以上に、こんな残虐なことをするロシアの一員になりそのような目線で見られることが堪らないということだろう。
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