似太郎

虎の尾を踏む男達の似太郎のレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
4.6
歌舞伎「勧進帳」を黒澤明がミュージカル仕立てにした風変わりでコミカルな逸品。主演の弁慶役の大河内傳次郎がカッコ良い。本作のキーパーソンである強力役のエノケンも活き活きと演じており、59分が瞬く間に終わる。

後の『羅生門』や『蜘蛛巣城』でも描かれた森の中の描写が秀逸で、大自然をバックにした人間達のユーモラスな掛け合いが見られて申し分ない出来である。主に会話を中心としたコメディ・タッチの演出は『用心棒』『椿三十郎』の原型だろうか。騙し、騙されあう喜劇。

黒澤明ほど「騙す者と騙される者」に拘り、人間の真理を追求する監督はそうそう見かけない。
格調高いというよりはフレンドリーな作風なので、後半エノケンが勧進帳の六方を踏まされ一行に置いていかれる「オチ」も爽やか。全体を通して上質の酒の酔い心地のような、楽しさを満喫させる一級の娯楽映画に仕上がった。
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