虎の尾を踏む男達の作品情報・感想・評価

「虎の尾を踏む男達」に投稿された感想・評価

1980年8月30日、並木座で鑑賞。(400円) 

公開順は後になったが、戦争末期の映画製作には悪条件の中でつくられた作品。 
この映画でのキーマンは、やはりエノケンだろう。もし彼が不在だったら、恐らく平坦な映画になっていたと思う。エノケンの起伏にとんだ表情・姿が、映画に躍動感を与えている。 

物語は、義経が峠を越えられるか否かというものであり、いたってシンプルであるが、大河内伝次郎とエノケンの対照的な存在感が、良い作品となった大きな要因だと思う。
茶一郎

茶一郎の感想・評価

3.6
【記録】
 第二次世界大戦終戦直後、目下本土決戦の恐怖に怯える国民を「笑い」の力でもって楽しませようと、黒澤明監督が『勧進帳』をミュージカルコメディ化した作品。
 人気劇、能の「安宅」と歌舞伎狂言の「勧進帳」をベースにしつつ、全編を完全にコメディに彩らせるのは、当時人気喜劇俳優だった榎本健一こと「エノケン」力。真面目な作劇を第三者視点で見るエノケン扮する強力の視点が、可笑しくて仕方がないです。
 和製ミュージカルと息込んだ今作ですが、製作当時はGHQの検閲により非合法作品として闇に葬られてしまった作品でもあります。
だりあ

だりあの感想・評価

3.0
当時は主演の名前が題名に付く
作品もあったと聞き、エノケンもその
代表的な喜劇役者だった。

そのエノケンの魅力全開なこの作品、
架空の強力を挟む事でオリジナリティを
確立している。
初期の黒澤作品を彩った名優たちが
揃っているのでその点の見応えはあった。
もし尺が2時間あったなら、どんな
映画になっていたのかという興味はある。
Tyga

Tygaの感想・評価

3.6
エノケンの魅力全開。

能「安宅」や勧進帳をベースにしているけど、難しいことは横に置いといて楽しめる作品。

コミカルで能天気なエノケンの存在が大河内伝次郎の弁慶の大立ち回りを引き立てているように感じた。

泡沫の夢のようなエンディングも好き。

DVDなら日本語字幕つきで見たほうがいいとおもう。
音の状態(+節回し)的に大河内伝次郎が何ていってるのかわからない部分が結構ある。
ごじ子

ごじ子の感想・評価

3.0
やけにカッコいい。時代背景や能・歌舞伎についての知識教養を要する作品かと躊躇したがいい意味で裏切られ、最後の跳び六法には笑わせてもらった。疎外感を覚えるほどの古くて馴染みのない世界なのに、60分の間に、自分が日本人であることを再確認する時間となった。
mikoyan358

mikoyan358の感想・評価

4.0
2009/2/1鑑賞(鑑賞メーターより転載)
「勧進帳」がベースなので凡その展開は知っていたが、まともに見るのは初めて。これまで木久蔵師匠の物まねでしか知らなかった大河内伝次郎の何言っているか判らない(本気で聞き取れない部分多数)けど圧倒的な存在感のある演技と、直接話の展開に絡まないもののケケケケという笑い声と軽妙な動きが弁慶一行の悲壮感と重厚感をぐっと高めるエノケンの振る舞いが素晴らしかった。製作が1945年9月(ということは撮影中に終戦!)、そしてGHQの規制で数年間お蔵入りにされていたということを知り、黒澤明はじめ製作者の苦労が偲ばれる。
あっという間で贅沢な59分
原作を知らないのでハラハラドキドキできた。
いい話でした。
DVDに日本語字幕が付いていて本当に良かった(笑)
要所要所で入ってくる歌もいいですね。
能とか歌舞伎の感じでしょうか。
和製ミュージカル。
弁慶ちょうかっこいい。
これが大河内傳次郎か。

あの関所の、中堅と若手のバランスが最高でした
富樫、あれは気づいてたな。
粋な盃でした。

ラストもよかったなー
螢

螢の感想・評価

3.8
平家滅亡後、英雄から一転、兄・源頼朝の命で追われる身となった義経一行の逃亡の一幕を、歌舞伎の演目として名高い「勧進帳」を基礎に、極めてシンプルな枠組みなのに、いかにも黒澤明監督らしい、一ひねりのユーモアと、緊張感ある演出で描いた良作。

ストーリー展開自体は、勧進帳に忠実です。
頼朝の命で追われて奥州へ逃げようとする義経主従七人。
義経は強力(今でいう山の案内人)、弁慶を始め家来六人は、東大寺再建の為の寄進集め(勧進)を仰せつかった山伏に扮して、安宅の関所を越えようとします。

しかし、義経一行が山伏に扮して逃げているとの情報はすでに伝わっており、関守の富樫は、変装した義経一行の正体を暴こうと、難解な質問をいくつもする。
山伏に扮した弁慶は、堂々と淀みなくその質問に答え続け、そして、白紙の偽勧進帳を、空で堂々と読み上げ…。

弁慶と富樫の、視線と言葉による両者一歩も譲らない応酬は、緊張感に満ちた厳しい美しさに溢れていて、これぞ、黒澤映画の醍醐味といった感じ。
黒澤監督は、刀を用いた躍動感ある対決シーンのない、このような動きのないシーンだけでも、これほど緊迫感ある見事な映像を撮れたのかと惚れ惚れしてしまいました。

軽口のせいで弁慶達に凄まれ、義経に衣装を貸す羽目になり、うっかり付いていった関所ではオタオタ・オロオロする、本家の勧進帳には登場しない架空のキャラクター「強力」を設けて、死ぬか生きるかの瀬戸際の舞台の中に、クスクス笑ってしまうコミカルさを埋め込んでいるメリハリ技法も、いかにも黒澤監督らしい。

この、巻き込まれる「強力」の表情やしぐさが、またなんとも絶妙です。あまりに見事なので、調べてみたら、なんでも、当時人気絶頂の喜劇スターで、榎本健一さんという方だそう。
外国でいうチャップリンとか、現代の日本なら、志村けんさんみたいな感じだったのかもしれません。

ラストの弁慶の、うって変わった滑稽な姿も実にご愛嬌。
これも、本家の勧進帳とは異なる展開ですが、「緊張しっぱなしの大仕事を終えた後だもん、そうなるよね!」と手を叩きたくなってしまいました。

にしても、敵方だけど、関守の富樫も、義を知る素敵な人です。

一時間にも満たない短い作品ですし、第二次世界大戦最中に撮られたことで予算がなかったのもあり(1945年9月完成)、後年の黒澤作品と比べたら実にこじんまりとした作品ですが、充分に黒澤手法による魅力が詰まった良作でした。
erigio73

erigio73の感想・評価

3.9
歌舞伎の勧進帳を見たこともあったが、映画の方が俳優のアップがあってよりハラハラ出来た。昭和20年にこれだけの俳優やスタッフ、コーラス陣も揃えられたことに驚き、戦時中の社会にまた違う見方が加わった。顔の表情が作り出す緊迫感が良かった。ただ台詞が聞き取りにくかった。勿論聞きとれたにしてもこちらの理解力がついていかない可能性も十分ある。
ひろ

ひろの感想・評価

4.0
黒澤明監督・脚本によって製作された1945年の日本映画

能「安宅」と歌舞伎「勧進帳」を題材にした、黒澤明初の時代劇。長尺で知られる黒澤映画では珍しい59分という最短の作品でもある。それも、終戦間近で金をかけた撮影ができなかったからだ。さらには、GHQの不当な処分により、上映されたのは1952年になってからだったというんだから時代を感じる。

短い作品だけれど、ミュージカル風の時代劇として秀逸な作品だ。義経の悲壮な旅物語をより際立たせているのは、原作にはないひょうきんな強力の存在だろう。その強力を演じたのは、人気の絶頂期であった「昭和の喜劇王」、エノケンこと榎本健一だ。数分もしないうちにエノケンの凄さが解るだろう。この人の表情や動きは人を惹き付ける。暗い時代にも人々を笑わせ続けたのは伊達じゃない。

弁慶を演じた大河内傳次郎と、富樫を演じた藤田進の大スターが対峙するシーンも見ごたえがある。脇を森雅之や志村喬が固めてるんだから、贅沢にもほどがある。短い作品なのに、ラストもしっかりしている。あなた達の境遇をお察ししますといった、言葉にしない男のやり取りがかっこよすぎる。短い映画だし、気軽に観れるから観るといいよ。
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