佐藤克巳

虎の尾を踏む男達の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
5.0
黒澤明の混じりっけのない純粋な黒澤映画といった趣きある傑作で、私の一番好きな作品である。本来弁慶大河内傳次郎が安宅関で、「勧進帳」を読み上げ、義経岩井半四郎に杖を打つ大芝居がメインだが、強力榎本健一の機転が利きユーモラスで陽気な庶民に重点があるようだ。後半の冨樫藤田進が謝罪で催した酒宴でのエノケンの素晴らしいボードビリアン振りが堪能出来た。また森雅之、志村喬等山伏一行の風采が規律正しく、ラストで寝入るエノケンに着物を掛けてやる優しさ、アップに映し出された人相が正に日本人男性ここにありの立派さに感動した。もうこんな日本人は現れない。
佐藤克巳

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