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ゴッドランド/GODLANDのkanのレビュー・感想・評価

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
4.4
宣教師と信仰について、新しい視点から描く
かつてなく好きになれない主人公と、アイスランドの大自然を主に写す引きのカメラワークに少々困惑するも、その作りこそが監督の意図と汲めた時、ラストの解釈までビシッとハマる気持ちよさ
これ、名作です

※以下ネタバレ含む

宣教師ネタとなると、過酷な環境で試される信仰と心の動きにフォーカスされがちである
しかし今作の主人公、宣教師ルーカスは徹頭徹尾自分本意の人間で、心情描写にも深くフォーカスされない
なんなら、信仰を挙げる場面ももはや疑わしく感じるほど露骨に心もとない(ロウソク、祝詞など)

おそらく、この作品の主題として3層の枠組みが存在する
第1にルーカスの枠。自分本位、アイスランド人は土人の豚、神という後ろ盾。
第2にアイスランド人の枠。ルーカスを、神を受け入れようとするも、根底には"よそ者"として見ることしかできない意識。
ここまでが場面として描かれる世界。
そして第3に、アイスランドの自然である。
これこそがタイトルにもある"GOD LAND"の真の意図ではなかろうか。露骨に引きのカメラワーク、死体の風化と厳しい四季(?)。キリスト教概念としての神の、さらにその外に位置する大いなる大自然。

この大地では人間の営み(信仰も含む)などすべて神なる大自然の端で行われる稚戯なのだと思わざるを得ない。
共感できない主人公も表面的な異文化交流もすべて、所詮人間は、と思わせてくれる布石だったのかなと思ったり。
いや、非常に良かった
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