チッコーネ

赦し その遥かなる道のチッコーネのレビュー・感想・評価

赦し その遥かなる道(2007年製作の映画)
4.0
韓SBS制作ドキュメンタリーの映画版なのだが、版権フリーで許諾なしにコピーや上映が可能、という作品。
「家族を惨殺される」という恐ろしいトラウマを背負う人のサポート、そして「韓国内で死刑制度についての論議を活性化させる、社会的意義」を鑑みての、決断らしい。

NETFLIXドキュメンタリー『レインコートキラー』、劇映画『チェイサー(ナ・ホンジン監督)』の題材となった、ユ・ヨンチョル連続殺人事件の被害者遺族らが登場、憎しみと絶望に蝕まれた心情を打ち明ける。
韓国映画でたびたび描かれてきた復讐の念、そしてイ・チャンドンの『シークレット・サンシャイン』で描かれた「人が悲劇を受け止める過程」…、それらがフィクションでなく現実の重みで迫る内容は濃密。
酔いに任せ慟哭する遺族の姿には、どんな俳優にも再現しきれない切実が込められていた。
そして何より本作は「苦しみへの処方箋を明示する」という存在意義を持っているところが、素晴らしい。

日本版には竹下景子のナレーションが付けられているのだが、本国ではキム・ヘスがその仕事を無償で引き受けたという。
全体の8割は韓国語で字幕付きなのだから、竹下の吹替は特に必要ないのだが…、というか、DVDの韓国版音声を字幕付きで観れるようにして欲しかった。