やんま

夜明けのすべてのやんまのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.1
生きている限り等しく繰り返される夜と朝。少しの理解と気遣い(他者への働きかけ)が暗がりを照らし出す光となり得る。そんな描写が作中では幾度もなされる。

主に2人のやり取りは適度な距離とユーモアをもって描かれていた。前向きな作風は、レビューを読む限り当事者にとって救いに感じた所があるようで、「何を映すか」の選択も上手いなと思った。

切り返しの少なさや、例えばオフィスでの人々の動きを窓越しに捉えるシーン、つまり客観的視点の多さから我々は第三者でしかないことが強調される。ただ、そんな自分たちにもできることはあるのだ、と思わせてくれる。これは共感/没入?型の作品では得難いものだと思う。移入先の人物たちの物語は映画の終わりと同時に幕を閉じてしまうから。その辺りのフィクションとの線引きも絶妙だった。
画面の外にまで世界が広がるようなゆとりがあり、夜空を見上げれば彼らと同じ星星を眺められるような気がする。エンドロールでも世界は開かれたまま(何なら最後にはボールがこちらに飛んできて、そのままこちらにやって来そうな気配すらあった)、未だ続いているような感覚を覚える。


予てから備えていた視覚的な映像の上手さに加えて前作では台詞の制約があるなかで音にフィーチャーし、本作では外界との断絶により台詞の巧みなところが際立っていた。三宅監督、いよいよ凄いところまできている気がする。去年の特集上映でいくつかの作品と監督のトークショーを見逃してしまったことをじわじわ後悔してきている。
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