トラディショナル

夜明けのすべてのトラディショナルのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5
この社会が「かけがえのない人間の集まり」であることが正しいこととされる一方で、「誰が抜けても大丈夫なようにそれが構築されるべき」でもあるとされる矛盾にずっと疑問を浮かべていた。そして自分は後者の物言いを冷たいものと思って納得出来ずにいた。

でもこの映画を見て、なんか両立できるような気がしてきた。実際に人間ってのはシステムに当てはめようのない予測不可能性に満ちた存在だし、誰が消えても大丈夫ではないんだけど、そういう偶発性に備えることは必要でそれは決して冷たいことじゃないかもなと、この映画の結末を見て思う。登場人物のきっと台本にない日常のハプニング的なしぐさを許す画面が、全編にわたってそういう結論そのものを示してた。

あと、ラストのプラネタリウムを山添くんが見てなくて外にいるってのもすごい効いてる。あそこでまなざしがひとつに集まる危うさはこの映画に相応しくないものね。

随所に挿まれる夜の街で窓から漏れるひとつひとつの灯りは夜空の星のそれぞれくらい物語があるけど、どれかが時々休もうと街も夜空も美しい。それくらい壮大な世界とか宇宙に色んな生きづらさが肯定されながら包まれるような余韻。