Martita

ツィゴイネルワイゼン 4K デジタル完全修復版のMartitaのレビュー・感想・評価

4.2
最初にツィゴイネルワイゼンを見たのは何と40年以上も前だ。それ以来ずっとずっともう一度見たいと願い続けてきた。思えば内田百閒、夢野久作、泉鏡花などを夢中で読んだのもその頃だったろうか。

それまでストーリーを理解しながら本を読んだり映画を見たりすることが当たり前だった私には、清順映画は強烈な体験だった。

映画の中で唯一常識的に振る舞う青地に、映画を見ている観客も共感するし、常識で理解しようと努めるのだが、実は理解しようと思うほどこの映画は難解になる。青地自身ももますます自分の理解を超えた幻想世界にのめり込んでいき、自分が生きているのかどうかもわからなくなる。

大事なのは理解ではなくて、感じることなのだと思う。しかもありとあらゆる感覚を通じて感じることだ。例えば映画では食べ物がよく出てくるが、鰻、こんにゃく、水蜜桃、、、これらが観客の五感を知らないうちに揺さぶっている。

鈴木清順の映画では女性の着物がいつも素晴らしい。着物について知識があるあると、描かれている人物描写の理解がより深まると思う。

SEIJUN RETURNS in 4K の上映作品の中で、ツィゴイネルワイゼンだけがどうしても都合がつかず劇場で見られなかった。残念ながらAmazonでレンタルしたのだが、気になった場面は繰り返し見られるし、映像もクリアで案外よかった。
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