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AIR/エアのIKUZAGIEのレビュー・感想・評価

AIR/エア(2023年製作の映画)
3.7
NBAファン歴30年、公開をとても楽しみにしていた映画で、食い入って観てしまいました。
マイケル・ジョーダンは、なぜ特別なのか。
最近、NBAの歴代通算得点で1位となった“キング”ことレブロン・ジェームス。「ジョーダンとレブロン、選手としてどちらが上か?」という議論がよくあがりますが、一バスケ選手で考えると、ひょっとしたらレブロンの方が上かもしれない。それでも「ジョーダンとレブロン、どちらが偉大か?」と問われると、やはりジョーダンを推す。
全盛期のマイケル・ジョーダンは、明らかにバスケ選手の枠を超えていました。アスリートとして世界最高と謳われ、人気はマイケル・ジャクソンに匹敵し、世界中で賞賛され認知された。
では、当時バスケ選手として、一人だけ突出し、圧倒的だったかというと、そうでもなく、ジョーダンのライバルは大勢いたし、チームとしてもブルズ一強では無かった。
マジック・ジョンソンのレイカーズやラリー・バードのセルティックス、アイザイア・トーマスのピストンズなどのレジェンド達に挑みながら台頭したジョーダンは、同世代の名選手達ともしのぎを削った。バークレー率いるサンズ、ドレクスラー擁するブレイザーズ、ユーイング中心のニックス、カール・マローン&ストックトンのジャズ、レジー・ミラーのペイサーズなどなど、沢山のスター選手達がひしめく群雄割拠のNBAで、ジョーダンはライバル達を全員ボコった。そしてチャンピオンのまま2度引退し、先生兼選手として3度目の引退をした。(宮崎駿かい!)
時に現実のスポーツは、先日のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での日本代表のように、まるでフィクションかと思うような、ドラマティックな展開が待っている。ジョーダンのバスケ選手としての物語も同様で、ジョーダンが得点するたびに世界中が熱狂し、驚き、憧れた。それと同時に、ナイキのアパレルとシューズが最高にカッコイイという時代があった。当然ながら、NBAデビューする前のマイケル・ジョーダンが、数年後には世界が熱狂する偉大なアスリートになるとは誰も想像しなかった。母親のデロリス・ジョーダンとナイキ社員ソニー・ヴァッカロ以外は…。
映画「AIR/エア」は、世界がジョーダンに熱狂する前、ナイキが世界一のスポーツメーカーになるターニングポイントの物語であり、人気バスケシューズ「エア・ジョーダン」誕生の物語であり、スポーツ界の新しいビジネスモデル誕生秘話でもあります。バスケの話というよりビジネスの話なので、基本マイケル・ジョーダンは出てこないし、映画自体に派手さは無いが、バスケシューズで泣けたのは初めてでした。
役者陣も大変良かった。マット・デイモン、ベン・アフレックに、なんか久しぶりのクリス・タッカー。なんかみんなちと老けたな…(あ、私もか!(笑))。にしても、ヴィオラ・デイヴィスの貫禄はさすがでした。
ちなみにマイケル・ジョーダンの偉業は、バスケを世界に広めただけでない。若ハゲだったジョーダンは自らの頭を剃り上げ、つるっ禿げをオシャレでカッコイイものにし、全世界のハゲも救った。
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