はたなか

食人族4Kリマスター無修正完全版のはたなかのレビュー・感想・評価

3.6
言葉の通じない、攻撃的であるという恐怖感は、北センチネル島の部族たちを思わせる。登場する様々な部族ごとに肌に塗られた顔料が違うのも、今スクリーンに映っている部族がどの部族であるのか説明するのに非常に効果的だと感じた。各部族の細かい居住区のセットも本当に存在するものに見えてくる。

スクリーンに映る暴力的な行為の数々は、今でも色褪せることのない衝撃がある。人体を損壊させる暴力や性的な暴力。公開当時は、本当に強姦や殺人などの暴力行為が行われていたのではないか、と裁判が行われたほどであったらしい。娯楽の根源はセックスと暴力であるとはよく言ったものだ。

死体や人体の損壊造りも、ダリオ・アルジェント監督のフェノミナのような古典的な良さがある。
動物の殺害シーンも多くみられた。おそらくこれは本当の動物を殺害しているのであろう。非常にスナッフ的だ。動物愛護団体激怒モノで、今の時代には絶対できないような行為であろう。世界各国で上映禁止およびフィルム回収が行われたのも納得である。ホドロフスキー監督がエルトポという作品で本当の動物の死体や血液を利用していたのは有名な話であるが、この作品はその比ではないだろう。

私には、食人族たちが行う儀式や、人間の解体、食人が恐ろしく見えた。しかし、食人族たちにとっては部族外の人間も動物も共通した食料という認識なのかもしれない。現に食人族たちは人間を捕まえるや否や解体をし、取り出した内臓や首を掲げていた。これは食人族たちにとって神聖的な意味合いがあり、食料は天からの授かりものであるという習慣があるのかもしれない。

一見、ジャングルの奥地に潜む食人族がジャングルに迷い込んだ人々を襲うという食人族の行為を野蛮だと見せているようにみえるが、本質は違うと感じる。 文明力の高さ=人間の理性の高さ ではない。実際に、食人族を撮影しに行ったクルー達は部族を強姦したり殺害したり、居住区を燃やしたりという非人道的な行為を行う。これは食人族へ抗い、自分たちを守るために行った行為ではなく、自分たちが撮影している映像をより刺激的なものにして、自分たちが有名になろうという心理の下で行われた行為だ。

ニューヨークでの通常の撮影形式とジャングルでのモキュメンタリー形式の2つが交差して物語が進んでいくため、ジャングルとは対照的に、ニューヨークの摩天楼が映されるシーンが度々出てくる。撮影クルーたちの行動を観た影響で、私はこのニューヨークの摩天楼がソドムとゴモラに見えてしまう。


中学生の頃に鑑賞したことはあったが内容を覚えていなかったため、今回4Kリマスター&無修正完全版を映画館で鑑賞できたことを嬉しく思う。
はたなか

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