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ブルーザーのhasisiのレビュー・感想・評価

ブルーザー(2022年製作の映画)
3.5
米国。南部に位置するアラバマ州。
14才のダリウスは、モービルにある全寮制の寄宿学校に通っている。
夏休みに入り、自然豊かな地元、ボールドウィンで過ごすことに。だが、幼馴染とは反りが合わず、少年には居場所がない。
そんな時、ハウスボートに独りで暮らす中年、ポーターと出会った。
彼は元空軍でマッチョ。体中に入れ墨のある危険そうな男だった。

監督・脚本は、マイルズ・ウォーレン。
2022年にDisney+で公開されたドラマ映画です。

ウォーレン監督は詳細不明の若い男性で、2019年に大学を卒業している。主人公のダリアスのようにがっちりはしておらず、細身。
短編を4つ撮影して、今回が長編デビューになります。

タイトル『Bruiser』の意味は、乱暴者。ブルーザー・ブロディのブルーザー。

【主な登場人物】🧑🏿‍👨🏿‍🧒🏿
[アーネスト]叔父。
[シスターボーイ]店員。
[ジェイソン]幼馴染、小柄。
[ジューン]幼馴染、女子。
[ダリアス]息子で主人公。
[ヘクター]レストラン経営。
[ポーター]ドレッドマッチョ。
[マイク]幼馴染、大柄。
[マルコム]父。眼鏡マッチョ。
[ミア]彼女。
[モニカ(ニニ)]母。

【感想】🛶🏚️📻🌳
👕青春映画。
複雑な家庭の事情を持つ孤独な少年の物語。
生活は質素。
息子ダリアスは思春期で、生意気でイラついている。友達がいない子の付き合いにくい感じがリアルで、年下の知人の若い頃が目に浮かんだ。

🚲子供用自転車。
洋服や靴。成長期で体がサイズアップして、あらゆるものが合わなくなってゆく。
大人になって忘れていた記憶が呼び覚まされる。
よほど嫌な思いをしたのだろう、演出や会話が迫ってくる。
親と子供の両方の視点で描けていて客観的。
掴みが上手くて引き込まれる。

✍🏿登場人物がリアル。
マッチョなポーターがマイペースな友人に。まじめなマルコムが、親戚の叔父さんに似ている。
映画でよく見かけるキャラとは別軸で構築されている。
台詞も独特で、きっと親や兄弟。友人との会話を思い出しながら書いたのだろう。

兄のような年上の男性に遊びを教えてもらう感覚。青春時代を思い出させる。

イベントが痛い思い出ばかり。他人に知られたくない。あるいは、尊敬する人の見たくなかったような、恥ずかしい場面ばかり詰め込んである。
ひりひりする。

⚾反抗期。
親も同じ人間。子供に正論言われて追いつめられたらやり場が無いだろう。
おしめを代えて、字を教えて、キャッチボールして、養育費注いで、大きくなったら殴られるのだから、たまったものじゃない。

子供からすれば、親は年の離れた価値観の違う面倒な先輩。
親の夢を背負わされて、自分の色に染めようと命令されたら辛いだろう。
いつも一緒にいる家族より、遊び相手が魅力的に見えるのも仕方ない。

発言や行動の痛さ。逆に、いつまでも子供扱いしてくる親への気遣いなど、
子供から見える世界に臨場感がある。

もし、尊敬している立派な親に、子供に言えないような秘密があったら。
思い当たる節があって、それが普段の生活の端々から垣間見られるとしたら。
好奇心と恐怖が入り交じって、興味をそそられる題材。

🛻終盤がスリラー。
想像していた展開と全く違う方向へ進んで行く物語。
リアルな話だけどドラマチック。
幼馴染とは長年の因縁があるから衝突する前の恐怖は相当なもの。
その点でも、身近な存在に当てはめられる普遍的な題材を扱っている。

👔父の背中。
たとえば、お笑いタレントの息子が堅い職業につくような。
「確かにこの感覚あったなぁ」と懐かしくて妙に説得力があった。
大人になると忘れてしまうから、子供が成長してゆく姿を描ける人は貴重に感じる。

説明をはぶいた唐突な台詞など、断片的な場面がいくつかある。2周するとオープニングや、電話での会話の内容。父の心情が理解できてすっきりする。
さらっと描かれているようで、実は各場面にアイデアがあって技巧的だった。

【映画を振り返って】🌗🎠🎡🎈
ディズニーに買収されたのも納得の自主製作映画。

リアルな物語なのに映画好き。若手の趣味は細分化が進んでいるから、元ネタが見えづらくなる、の走りのような気がする。
監督の話によれば、PTAの『パンチドランク ラブ』や、テレンス・マリックの『地獄の逃避行』の影響を受けているらしい。
たしかに根底に流れている暴力性や、映画の流れには共通点が多い。主人公の少年ではなく、周りの大人たちの症状として描かれているのが特徴的だ。

🏍️不良。
家に居場所がなくて、夜の街によく出かけていた、とか。
路上でUFCのような殴り合いの経験があるとか。
暴走族にいた、のような人であれば共感しやすい内容かもしれない。

🏋🏿‍♂️筋トレしたくなる。
革ジャンを着た風来坊と、ネクタイをして中古車販売をしている2人の大人。
息子ダリウスがどんな道を選ぶか分からないけど、
対極にいる2人の姿は、やがて大人になる少年の模範であり、見ている側も背筋が伸びると言うか。身が引き締まるような後味だった。
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