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アリーテ姫の映画初心者のレビュー・感想・評価

アリーテ姫(2000年製作の映画)
3.8
少々メタ的な感想を。
この作品はフェミニズム童話として高い評価を得ているが、ある意味、片渕監督の私小説的作品といった所ではないだろうか。

まず、アリーテ姫の境遇だが、お城に幽閉され"お飾り"の姫を装わされていた。自分は何なのか、やりきれない想いに駆られつつも何もできない日々を送っていた。これは、1989年に放映された「魔女の宅急便」において監督を任されつつも、宮崎駿に監督を譲らざるおえず、演出補として甘んじざる負えなかった境遇と重なる。まさに"お飾り"の監督だったといえよう。
そんな中城から抜け出し、またもや幽閉されるわけだが、そこでアンプルと出会い、彼女の話を聞くうちに「物語を紡ぎたい」という欲求に駆られる。そこからは、彼女を覆っていた偽りのベールは剥がれ、ありのままの彼女が現れる。ここが監督自身の気づきであり、人々の話や物語から作品を紡いでいくというスタンスの確立だったのかもしれない。
その後、ありとあらゆる手を尽くし、脱出し、水を溢れさせることに成功する。その後、枯れた砂漠に緑が茂り、皆が幸せになるところでこの物語は終わる。まさにこれは、監督が考えた物語が私たち鑑賞者の心を豊かにさせる構図そのものなのだ。監督自身の苦悩、そしてその時抱いていた希望そのものが詰まっている作品なのだ。

城という高い場所から人々を俯瞰するのではなく、人々に揉まれ、人々の生活に寄り添うスタンスで映画を作りたいといった監督の意志までこの作品から伺うことができる。
監督は今でこそ音に聞こえる実力派監督になったが、今から
20年前にして現在のビジョンを得ていたとなると、天才のそれには驚かされるばかりだ。(私自身の妄想が含まれます)
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