このレビューはネタバレを含みます
物語は、元CIA・NSA局員のエドワード・スノーデンによる2013年の内部告発・情報漏洩事件と、同時期にアメリカ国防情報局の職員としてアフガニスタンに赴任していたミッチェル・ラフォーチュンの実体験がベースで、脚本はラフォーチュン自身が書き下ろしたものとか。
最近の中近東を中心としたこの手のノンフィクションベースの戦争作品には、かつての実録ヤクザ映画の読後感と重なるものが多い。
すなわち、一体何のために戦争をしているのか、大義は見えにくく、敵の敵は味方のような仁義なき戦いの様相を呈している。
主人公自身が作中で述べるまさしく『現代の戦争に勝利者はいない』のだ。
ただ金のため、権力のための亡者達がいる一方、国をより良くしたいという真っ当な人たちもいることで、状況は複雑化し、整理がまるでつかない、無力感というか虚無感しか残らない結末になってしまう。
始末が悪いのは、生還や脱出成功、勝利はいつも一時的なもので『これで終わり』とならないことで、ずっと虚無、いつまでも虚無が続くことだ。
最近の原作があるノンフィクションの戦争モノが似たような読後感になるのは仕方がないのかもしれない。
劇中で描かれるアフガニスタンの勢力争いも、イランにパキスタンが加わり、一つになれないのは、戦前の中国を想像するとわかりやすい。
自己主張の強い軍閥を統一したのが結局、独裁の中国共産党だったことを思えば、アフガニスタンも独裁的な政権でないと一つにはまとまれないとの暗示も示されていたように思われた。
このどうしようない世界も罪のない人たちの亡骸が積み上がり一定数を超えれば、何処かで誰かが気づいて良くなるのか?
まだ100年くらいはかかりそうな気がして、見終わったあとも虚無感は続く。
嘆いても仕方がないが、虚無感を感じるのは映画の中だけで終えたいなあ☠