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碁盤斬りのThesilkskyのネタバレレビュー・内容・結末

碁盤斬り(2024年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

これ程の浪人親子の仇討ちの熱い思い。
囲碁を通して人の心を説く~武士としてこの振る舞い。
お見事であったと感服致す次第です。

今日は「碁盤斬り」 待望の鑑賞です。
実は、この映画チラシを手にした時 
この髭の横顔が草彅さんだとは全く気がつきませんでした。
細い筆書きのタイトルで 碁盤斬り・・・
果たしてどんな映画なのかとワクワクして観ました。

この映画、”たそがれ清兵衛”以来の強者作品かもしれません。そんな気配を感じました。

監督:白石和彌氏
脚本:加藤正人氏
(素晴らしい役者陣)
・柳田格之進(浪人 囲碁名士):草彅剛さん
・お絹(柳田の娘):清原果耶さん
・萬屋源兵衛(商人):國村隼さん
・弥吉(源兵衛の血縁でない息子):中川大志さん
・お庚(遊郭女将):小泉今日子さん
・柴田兵庫(仇討ち相手):斎藤工さん
・梶木左門(柳田の同僚藩士):奥野瑛太さん
・徳次郎(萬屋番頭):音尾琢真さん
・長兵衛(賭博場親分):市村正親さん


感じた事:
・まずは音入れでしょうか。とっても良いです。褒めたいですわ。
上手くかつ効果的に音入れされており囲碁を打つ音や、後ろからの喚び声が良い感じに場内に入ってきます。流石です。
太鼓の音でズンズン、迫ってくる感覚が良く出ていて、最後のエンディング締めまで気を一切抜くことなく入っている所が素晴らしい。

・灯の入れ方。とっても良い優しい色合い。障子の色、空の色、暗闇の顔色、行燈で照らされる顔、晴天のしたの笠の中の顔など、どれも良く考えて色が入ってますね。今の時代劇にはこれぐらいの灯色が合ってるのではと思いました。

・お絹役の清原果耶さんですね。100万ドルの額ですね。くりっと丸く優しい面立ち。この浪人の大切な娘役に相応しく感じます。
益々の活躍を応援いたします。

・長兵衛役:市村正親さんの バシッとした賭博場を仕切る声が凄くいい。
役者として当たり前なんだろうけど、勝負啖呵きったが逃げそうな柴田兵庫に対して、”囲碁の腕がお有りなら命懸けの勝負受けてはどうか”と言葉責める所が特に良い。この親分さんの取り計らいで仇討ち勝負が決まるのであった。この方の視線も振る舞いも、実に親分さんを本気で感じるなと思います。

・そして柳田格之進役:草彅剛さんですね。顔は中々仕上がっていて 眉間のぽっこりコブも良い感じ。話す声質だけがちょっと現代っぽいかな。ですが、武士としての振る舞い出で立ち、決まりセリフの ”決して忘れてはおらぬな” めっちゃシビレますね。
目線もキレッ切れで、鋭い。こんな役が出来るんだと改めで惚れた次第。次作も是非 時代劇で活躍して頂きたいですよ。

・最後に柳田が柴田の腕を手にした刀で討つ所が、ちょっと一瞬で勝負早かったかな。あの場面 もう少しスロ-でも良かったかも。または斬り返し2回目で切り込んだ感じでも良かったのではと感じた。
監督は一瞬でバシッと討たせたんだけど、囲碁の手と同じで正々堂々と言う事なのだろうか。そう言う思いなんだろうと感じました。

・50両が見つかって、約束通り源兵衛と弥吉を斬るところですね。
あの場面、あの時の柳田の武士としての心意気に感無量です。

・掛け軸を貰い、柴田の申していた振る舞いを理解するところ。自分が藩を出たが、同じく追われ出た仲間への心遣い。決してその事を忘れない姿勢が特に良い。人を憎むだけでは無く 相手がその後どの様に生きてきたかを理解する事こそが 人を重んじる正しき武士道と、そう感じます。

・娘お絹が弥吉と無事に縁組が執り行われて、最後に浪人として去って行くところ。柳田の浪人囲碁名士としてのこの先を願わずにはいられない想いで心が満ちます。
晴天の笠蔭の下に僅かに魅せる顔。傍には居ないが、きっと娘は幸せになるだろう。女房の仇を討って自身の心の荷も少しは降りたのであろう、その顔は少し安堵に満ちていたと感じます。


中々の真正時代劇です、
是非、劇場でご覧下さいませ!
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