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碁盤斬りのShinMakitaのレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
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☆俺基準スコア:2.3
☆Filmarks基準スコア:3.4




彦根藩進物役として殿に仕えていた柳田格之進は、身に覚えのない盗難の責を負わされ故郷を追われた。妻が自害し、1人娘のお絹と共に江戸の長屋暮らしの柳田は、ある時、元部下の梶木左門と再会。聞けば柳田を陥れ妻を死に追いやった張本人が明らかになったという。その名は柴田兵庫。名うての碁打ちで、藩を出奔してから全国の碁会を転々としているらしい。柳田は復讐を決意し旅支度をするが、そんな時、彼の碁打ち仲間の高利貸し・萬屋源兵衛宅で金五十両が消える事件が発生。萬屋の番頭が柳田を犯人と邪推したことで、侍の名誉を傷つけられた柳田は……


「碁盤斬り」


以下、ネタバレに二言は無い。


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白石監督の初時代劇ということで期待していた一本。木下グループの製作で、東映じゃなかったのが少し意外。

確かにセットも美術も音楽も素晴らしいし、変に現代風に画面をガチャガチャ動かすこともなく、かと言って退屈な固定カメラで押すこともなく、映画全体のルックスは凄く良かった。時代劇を観た満足感はちゃんと得られると断言します。難点は柳田というキャラを観客が呑み込みづらいというところかな。清廉潔白で武士の誇りを重んじる…といえば聞こえ良くヒーロー然と見えるけど、これ相当な困ったちゃんですよ。わかりやすい比較対象は、「相棒」の杉下右京かな。真実追究のためなら、それで幸せが壊れる人間がいようが構わないという「警察官の矜持」を頑なに守るところは、柳田の「侍の矜持」にこだわるところに似ています。50両盗難の嫌疑ごときで切腹に走るとこや、弥吉に「首を貰い受ける」と迫るとこ、2人の首を揃えて刀を抜くとこなどは、武士にこだわり続けて引込みつかなくなった哀れな男の脊髄反射的行動なんですよね。これが現代の感覚では解りづらい。亡き妻の復讐、というのも、この妻と柳田がどれほど愛し合っていたのかという描写もないから、「武士として恥かかされたから復讐」という風にも取れてしまう。藩を追われた原因…掛軸盗難と妻との生活描写が細かくあれば、50両盗難容疑であれだけ激昂したり復讐に燃えたりの説得力が増した気がしますね。


草彅剛はまずまずだったけど、やっぱキョンキョンが素晴らしかったなあ。吉原遊廓の女将が見せる鬼と仏の二面性、最高ですよ。
二面性といえば、國村隼もケチから仏に変化していきましたよね。柳田格之進は、市井の人々と触れ合い復讐を果たす旅を経て、人間にはこの二面性があることにやっと気づいたのかもしれないな。ラスト、己の仕事のせいで困窮することになった者たちを救う旅に出る柳田は、武士である前に人間であれ、と思い至ったのかもしれませんね。
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