シバザキ

碁盤斬りのシバザキのレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
3.8
 白石和彌監督の映画は基本的に大好きなのですが、『仮面ライダーBLACK SUN』みたいなものも作る時があるので油断なりません。そんな中で初の時代劇とのことで期待半分不安半分の気持ちで観ましたが、映画監督としての実力の高さがうかがえる高クオリティの映画になっていたので安心しました。

 草彅剛の囲碁の達人でありながら町中で質素な生活を送る侍の佇まいが良かったです。彼との囲碁を通じて絵に描いたように善い人化してゆく國村隼もキャラが立っていたし、人物描写が思っていたよりも面白かったです。
 基本的にいい人で知れ渡っていたけれども、復讐相手の存在を知ったあたりから侍としての野蛮な部分が顔をのぞかせる豹変っぷりもよかった。急に「ナメられたら殺す」スタイルになるところも白石和彌監督の持ち味が光っっていたと思います。

 ただ、物語全体を通しての中途半端さを感じたのも事実。娘を人質に取られているのに、そのタイムリミットをほっぽり出して萬屋の首を切りに行くところとか、その自分勝手さに普通にムカついてしまいました。その揺らぎを人間的と取ることもできるかもしれませんが、この作風だったら最後まで容赦なく無慈悲でもよかったのではないかと思ってしまうのです。遊郭の女将もあそこでは無慈悲でいて欲しかった。正直とってつけたような粋描写を見せられても本作に関しては説得力がなかったと思います。

 囲碁とアクションを掛け合わせた映画といえば韓国の『神の一手』という良作がありますが、それとの共通点や相違点を意識して観てみると面白いかもしれません。正直私は『神の一手』の方がムチャクチャやっていて好きなのですが、今作も静かなる方向で攻めていてちゃんと差別化できています。
 さっきまで殺されそうになった人とあんなに楽しそうに交流できるなんて、懐が深いですね。
シバザキ

シバザキ