Marie

ヴァチカンのエクソシストのMarieのネタバレレビュー・内容・結末

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

緊張感があって、後半は特に非常に集中させられる作りでとても楽しめたのだけれど、ただの殉教に止まらない『沈黙』のような哲学的な展開をせっかく持ってきたにも関わらず、エクソシズム終盤の呆気なさが惜しい。たとえばガブリエーレが最終的にサタンに打ち克った内面的葛藤の描写、また自身の重荷であった自責の念を葬る過程であるとか(地獄へ沈んでいくアスモデウスはガブリエーレの自責の象徴である少女の姿をしていた)、ガブリエーレを救ったトマスの信仰心の固さなど、もう少し丁寧に描かれていれば一番のクライマックスになりうる部分だった。目に見える出来事のみから観客自身が想像で補うべき部分もあるけれど、その根拠を垣間見せてくれることによってこそ物語が生きるものだと思う。脚本でもうひと押しあればきっと素晴らしい作品になっていたはずだ。ホラーとヒューマンドラマの境界で、やや宙ぶらりんになってしまった印象を受けた。
しかしながら事実は小説よりも奇なりを地で行く魅力的な内容、ほどよくデフォルメチックでもありながら人間的な葛藤を抱えた登場人物に魅せられ、続編があれば必ず観に行くつもりだ。
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