もはやこの世界に居場所など無いということに気づいてしまったおじさんの悲哀。もう少し感謝してくれても良いだろ！と声を荒げた直後に膝をついて謝罪する。身に染みついたマスキュリニティを振りかざすことが許されなくなった情けない男に娘がかける言葉は、半笑いで「よく喋るねぇお父さん」のみ。
(工藤遥のあっけらかんとした演技は本作のハイライト。「死ぬの？」のタイミングとか絶妙)
新たな記憶は薄れ、過去の思い出にすがるしかなくなったおじさんと唯一対等な位置で会話をしようとする元教え子も揺さぶりをかける。セックスワーカーの転身を仄めかす彼女に「そのままでいい」とどうしても言えないのはなぜか。
