プリオ

法廷遊戯のプリオのレビュー・感想・評価

法廷遊戯(2023年製作の映画)
3.0
主要キャラは3人。

弁護士の永瀬廉、
容疑者の杉咲花、
被害者の北村匠海。

この3人が何をどこまで知っていて何を望むのかという各々の思惑を曖昧にし、最後の最後で一気に解き明かす手法は、ミステリー映画の構成としては王道であり、王道であるが故の一定の爽快感は得られたと思う。

でも、読めた。

容易に、読めてしまった。

オチがほぼ予想通りだったので、どんでん返し映画としてのクオリティは低いかと思う。

また、なかなか主要キャラ3人に感情移入できなかったのも、マイナスポイントだった。

これは今作が観客劣位型のミステリーだから登場人物に感情移入しづらいのは当たり前なんだが、それならそれでキャラに魅力を持たせるためのなんらかの工夫はほしかった。会話シーン全般に面白さがなく単調でつまらなかった。

また、真相がわかった今となっては、主要キャラ3人のビハインドストーリーがけっこう濃くて、映画内ではとても収まり切らないことも分かる。

それを「余白」と呼び片付けることもできるだろうが、殺人の動機を含めた諸々の感情に説得力がなく、ちゃんと描くべきところが圧倒的に少なかったように感じる。正直、30分×10話のテレビドラマにした方が良かったような気がした。

ただ、杉咲花の演技は安定に良かった。

おっかない顔して図太く低い声で叫ぶ杉咲花に、思わずビビると同時に、TBSドラマ「夜行観覧車」を思い出して懐かしくもなった。

以下は、今作におけるインタビューでの杉咲花の発言だが、個人的に刺さったのでここに書き残す。

「自分でめちゃくちゃ準備していくっていうよりも、現場に行って刹那的に生まれるものを大切に、突発的に表現するからこそ、初めて働く感情みたいなものがあるんだなって瞬間が多くて・・・」

この考えや感覚に、僕も共感した。

でも、同時に、その裏にある膨大な蓄積があるからこそ成せる技であるとも思った。

全てはそこから生まれるアドリブなんだよな。





ーーーーーネタバレーーーーー





最近の杉咲花はこんな役が多いな。それはつまり『過酷な環境因子により育った悪魔みたいな女子』とでも言おうか・・・。

人間は罪悪感や自己嫌悪をつい抱きやすい傾向があり、この世界ではそんなものを抱えて生きている人はたくさんいる訳だが、そんな人たちが進む道筋には大きく二つあると僕は思う。

一つは、罪を受け入れる選択。
二つは、罪を拒絶する選択。

取り返しのつかない罪により、強固な絆で結ばれた二人。

しかし、一方は罪を拒絶し、もう一方は罪を受け入れる選択を選んだ。

お互い犯した罪はあるわけで、その事実は変えることはできないわけだが、罪と向き合う姿勢は変えることができるし、そこにその人の生き様が現れるのだと思う。

ラスト、杉咲花は永瀬廉に絆を絶たれぶっ壊れてしまう訳だが、その時の杉咲花の演技はなかなか迫力があった。でもやはり可愛いが勝ってしまうのは、致し方ないか。彼女は可愛いを通り越して、あまりに愛しいから。
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