MASH

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのMASHのレビュー・感想・評価

4.5
A24の中でも特大ヒットを放ったホラー映画。"呪いの手"を握って「Talk to Me」と唱えると霊が降りてくるという。一見そこまで大ヒットするような内容には聞こえないかもしれないが、この映画はそれを見事なまでに現代的な視点で描いている。

呪いの類を試す若者というのはホラー映画の定番だが、この映画ではそこを上手く捻っている。"チャレンジ"と称したSNSに投稿することで承認欲求を満たそうとする。そして若者ならではの焦燥感や孤独感の中で、それらの感情から逃れるためにドラッグ感覚で呪いを体験する。呪いが恐れるべきものではなく、娯楽として浪費するものに変化していっている。それが自身の体や心を蝕むものであってもだ。

前半は恐怖以上にその部分を強調して描いており、他のホラー映画とは一線を画している。で、実際呪いによってマズい状況になってからも、ちゃんと秀逸なホラー映画として恐怖と面白さが加速していく。これもちゃんと前半で主人公のミアやその友達のパーソナリティをしっかり描いているからだろう。ホラー映画にありがちな"死ぬために存在するキャラ"がいない。当たり前だが見逃されがちなこの要素を大切にしている。

そして、後半からは悪霊に取り憑かれたミアの視点で物事が進むのだが、ここもまたユニークだ。呪われているあるいはおかしくなっている、その境界線が絶妙なのだ。ミアが見るものを観客も見ていくため、彼女の下す判断が異常でありながら妙に納得してしまう。自分でもこうしてしまうかもという感覚に陥るのだ。

それは彼女の演技はもちろん、非常に不快なビジュアルの数々が説得力を生んでいる。(おそらく)CGの使用を最低限にして特殊メイクなどで表現されたビジュアルは、昨今のホラー映画に不足しがちなリアリティを生み出している。正直かなりグロいのでこれがPG12というのは中々攻めてるなという。

個人的には後半でも前半にあった"現代的な視点"を強調して欲しかったが、やり過ぎても露骨になりそうなのでこのバランスで良かったのかも。最後のオチも呪いは続いていくことを示唆しながらも、映画としてはちゃんと主人公であるミアの物語として終わりを迎えるというのもよく出来ている。意外な視点と丁寧なキャラ描写、そして笑いに逃げていない不快なホラー描写。流石はA24だなと唸らせられる。
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