千年女優

12日の殺人の千年女優のレビュー・感想・評価

12日の殺人(2022年製作の映画)
3.5
フランスはグルノーブル。10月12日の夜にパーティから帰宅途中だった女子大生クララが何者かにガソリンをかけて焼死させられる殺人事件が発生し、担当を任されることになった新任班長ヨアンが率いる操作チーム。捜査の中で次々と有力な被疑者が挙がるもどれも犯人と断定できぬまま迷宮入りへの道を辿る様を描いたサスペンス映画です。

ドイツ生まれの映画監督で母親の母国フランスでキャリアを積み重ねて東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された前作『悪なき殺人』でも高い評価を得たドミニク・モルが、2013年に実際にあった未解決事件を基に映画化した作品で、無情な物語が観客の心を捉えて話題を集めるとセザール賞では最優秀作品賞含む六冠に輝きました。

『羅生門』を思わせる多視点の「藪の中」サスペンスを披露した前作に対し、本作ではポン・ジュノの『殺人の追憶』を連想させる暗中模索のサスペンスを丹念に描きます。フィンチャー作『ゾディアック』ら類似作も多く二番煎じ感は無きにしもですが、様々な形の男女関係を連ねることで複雑多様化する現在の捜査の難しさを綴る一作です。
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