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アイドルマスター シャイニーカラーズ 第1章の雑記猫のレビュー・感想・評価

2.7
 アイドル育成ゲーム『アイドルマスター』シリーズの1ブランド『シャイニーカラーズ』のアニメ化作品。本作は来年春から放送されるTVアニメの1話から4話までを1本の劇場作品に編集したものとなっている。


 「アイマスの映画って、この前終わったばっかりじゃないの?」と思ってしまうところだが、あれは『ミリオンライブ!』。こちらは同じアイドルマスターでも、『シャイニーカラーズ』という別のブランドのアニメ化作品である。『ミリオンライブ!』から立て続けのアニメ化であるうえに、複数のアイドルの女の子たちがいて、彼女たちのプロデュースからマネージメントを一手に担うプロデューサーと呼ばれる人物がいて、というシリーズ共通の作品構造があるために、基本的には似たようなストーリーラインが展開されるのだが、だからこそ、各ブランドの色が見えてくる面もあり、この差異が興味深い。


 本作『シャイニーカラーズ』の特徴はとにかく湿度が高いアンニュイな演出。特に印象的なのが、登場アイドルの一人である櫻木真乃がプロデューサーにスカウトされてアイドルになるまでを描く第1話で、落ち着いた演技トーン、淡い色使いと光の演出、しっとりとしたBGMが相まって、作品全体がとにかくアンニュイ。特にBGMの力が絶大で、本作に登場するキャラクター一人一人はいわゆるソシャゲキャラらしいポップなキャラクターであるし、ストーリーもいかにもソシャゲのコミュを下敷きにしたような薄口のものなのだが、全編BGMのしっとり具合が極まっているため、全体として非常に湿度の高い印象を受けるのである。演出の力というか、ここまでBGMの力を感じる作品も珍しい。


 本作では計16名というなかなかの数のアイドルたちが登場するのだが、この16名が4つのアイドルユニットに分けられており、基本的には各話このユニットのどれか1つに焦点を当てたストーリーが展開される。この観点で見ると、アイドルマスターシリーズの中でも『SideM』が一番雰囲気が近いのだが、本作では全員が同じ芸能事務所に所属しているにも関わらず、ユニット間の横のつながりが今のところ全く描かれていないのが興味深い。それぞれのユニット内で物語が完結しているのだが、そのおかげで少ない話数でしっかりと全てのアイドルが印象に残る構成となっている。また、本作ではW.I.N.G.と呼ばれるアイドルユニットの全国大会が存在しているという世界観になっており、本作に登場する4ユニットも全てこれに参加することが示唆されている。連帯や団結が描かれてきたアイドルマスターシリーズにとって、明確な対決が描かれることとなれば、これはシリーズとしては大きな新機軸であろう。ここまでの横の繋がりの描写の無さは、中盤以降のW.I.N.G.への布石なのかもしれない。
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