まみ

さらば、わが愛/覇王別姫 4Kのまみのレビュー・感想・評価

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「(蝶衣は)芝居と現実、男と女の区別がついていない」by那。京劇の客層は変わっていく、初めは熱狂的な市井の人から日本軍になり、中国軍になった。小楼も変わっていく、自信家で覇王のように尊大だった彼はコンリーという守るべきものができたり次第に堕落し、時代の流れを仕方ないと受け入れて順応した。コンリーも変わった。初めは高飛車な女郎だった彼女は小楼を愛し、彼を立て、どこか女将のような貫禄も感じられるようになった。蝶衣だけが変わらない、ずっと変わらない。まず日常/舞台の様子をとってもそう。女形?が染みついているのか、普段から手は前で柔らかく重ねていることが多く、指先の動きまでしなやか。小楼を見る時も一旦下を向いて見上げたりする(少し伏目がちになる仕草が色っぽい)。あと、客席からの妨害があっても演技を辞めない様子は、舞台と客席で断絶が起きてるみたいだった。主に京劇絶世期?の1930年代〜文化大革命期の1960年代までとかなり長い年月を駆けていく作品だけど、蝶衣のアイラインの角度はいつも正確だった。蝶衣は小楼に「永遠の話をしてるんだ」って言ったけど。何か新しいエッセンスを加えない限り京劇においては同じ演目が繰り返され、「伝統、変わらないこと」がその真価である。変わらないことが正しい京劇(少なくとも蝶衣の中では)と、変わらない、変われない蝶衣は表裏一体。京劇の芸術性も虞姫として覇王を愛する気持ちも小楼への執着に似た何か…も永遠のうちに閉じ込めた蝶衣は京劇そのものだった。
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