在りのままで咲けのまぬままおまのネタバレレビュー・内容・結末

水村さんさすがだな…
自分の作品になっている。あれだけ感情を表出させて、カメラと人物の心理的な距離を近づけるのはなかなかできない。「映画」になっている。

特に物語として新奇性はないのだが、ストレートに展開していくのは好感がもてる。だからこそ登場人物の感情にフォーカスできるのだと思う。

本作は撮影現場を舞台として、劇中劇を採用している。基本的に劇中劇は虚実の混交を目的にされることだと思っているのだが、本作では劇中劇と抽象的なセリフが彼女らの生活や「在りのまま」を見直すことになっている。このような現実の参照として劇中劇は機能するのだと感心したが、ラストが全くよくない。

結局、現実とされていたものも劇中劇であるというトリックになっており、そこに驚きが期待されている。しかしそうであるならば、主人公の子育てと俳優業の両立の葛藤も嘘であって、物語を通して彼女が変化したわけでもない。現実の参照でもなくなったわけだし、では何の映画なのかと。それを観賞者の現実の参照とセンチメンタルに向かわせるなら、感情だけに訴える「普通の」映画としか思えない。