すぎもん

ミッシングのすぎもんのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

完成披露試写会にて。

吉田監督は本当に天才だ…
映画観てこんなに泣いたのいつぶりだろう…
監督が登壇されたときに語っていた通り、観た後に人に対して優しく接したくなる映画だった。

実際に起きた有名な事件がベースにあると思われる本作。登場人物の心情を想像すると観てて息が苦しくなるくらいツラい。
中盤にキツいシーンで泣かせて、最後に優しいシーンで泣かせるの本当にズルい。映画館で号泣したの久しぶりだった。
世間の理不尽や気持ち悪さが印象深く描かれているから、たまに出てくる優しい人がとても魅力的で素晴らしい人物に見える。印刷会社のオジサンとか、2つ目の失踪事件のお母さんとか。これが鑑賞後に人に優したいと思える理由のひとつなんだろうな。
誰かの些細な行動で傷つくこともあれば救われることもあるというのが最近の監督の映画の一貫したテーマであると感じる。

「空白」では完全なる悪として描かれていたマスコミの内部に焦点を当てたのも興味深かった。
扇状的な報道が生まれるメカニズムがよく分かった。大衆にウケることが正義で、出世していくのもそういう報道をする人間。それじゃあ1人が信念を持って仕事しても悪質な報道は無くならないよな。おかしいと思う人間がいようと、仕組み上誰にも止められないようになってるんだろうな。また、マスコミだけでなく下世話な報道を観て喜ぶ大衆の責任でもあると感じた。
本作のマスコミ側は砂田以外あんまり良い奴いなかったけど、彼らも信念を持って仕事をしていた頃があったのかもな〜とか考えちゃった。信念があっても業界に長くいることで砂田の上司みたいな感じになっていくのだろう。
まぁマスコミ業界に限った話では無いとは思うけど。

ストーリーだけでなく出演者の演技も最高だった。
石原さとみの今まで見たことのないような役柄に圧倒された。ロングインタビューの長回しと警察署での慟哭には思わず泣いてしまった。
中村倫也の冷静でありながら芯がある男もハマり役だった。ガラス越しに上司を罵倒するシーンの狂気的な顔が最高。
青木崇高の哀しみを抱えながらも少しうんざりしてしまってる感じの演技もリアルで素晴らしかった。ラストシーンはもらい泣きした。
主人公の弟役の森優作さんも凄かった!自分も口下手で人付き合いが苦手な人間なので、うまく喋れなかったり変な嘘ついたりして追い詰められていく様子がガチすぎて痛々しかった。

吉田監督の作品は見終わった後、良い意味で長く感じる。
見てる間は全然長いとは思わないんだけど、後から振り返ると、一つひとつのシーンが印象深いから、「これ本当に全部2時間に詰め込まれてたのか⁉︎」って感じになる。

見ず知らずの人間を簡単に攻撃できるようになった現在、より多くの人に見てほしい作品です。
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