ノラネコの呑んで観るシネマ

ミッシングのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.9
あまりにも胸が苦しい。
6歳の愛娘がある日突然失踪する。
手がかり無しのまま3ヶ月が過ぎ、両親の石原さとみと青木崇高は、憔悴しながらも毎日ビラを配り、情報を集めている。
キー局の興味は早々に薄れ、地方局の中村倫也のチームだけが報道を続けている。
物語の初めからヘビーな状況だが、傷付いた家族に世間が追い討ちをかける。
ネットでは根も葉もないデマが一人歩きし、両親はバッシングされ、中村倫也もセンセーショナリズムを求める局内圧力に抗えず、偏向した番組が更なる炎上を誘う。
なりふり構わない母親を、鬼気迫る迫力で演じた石原さとみが圧巻。
受けの演技の青木崇高や中村倫也も素晴らしい。
描き出されるのは、この世界の無常。
しかし吉田恵輔の演出は非常に抑制されたもので、観終わった時の感情は不思議と穏やかだ。
私も駅で行方不明の家族のビラを配る人たちを、見たことがある。
あの人たちがどんな思いでいたのか、もし今度出会うことがあったら、必ずビラを受け取ってあげよう、そんなことを思わされる映画だ。
シチュエーションは全く違うが、傷付いた人たちに、なぜもっと優しく出来ないのか?と言う問いかけは、難民問題を描いた「人間の境界」とも通じる。
見事な映画だが、鋭くえぐってくるのは確かなので、体調のいい時に観た方がいい。
今年の実写邦画の暫定ベスト。
ブログ記事:
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