エニグマ

ミッシングのエニグマのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

失踪した少女を必死で探す両親。ビラ配りやテレビでの呼びかけを行うも誹謗中傷や信ぴょう性の無い情報ばかり。母親の苦労も虚しく、時間は残酷に過ぎていくのであった。

人生で吉田恵輔作品は2本目だけど、案の定重い話であった。とにかく演技の演出が素晴らしく、全員現実にいそうなリアリティがある。家族が失踪した経験など無いが、実際起きたらこうなるんだろうなという説得力のある演技。特に石原さとみはリッチマンプアウーマンとかやってた人とは思えない迫力。唇はカサカサで髪もボサボサ、舌打ちしながら5ちゃんを見るというみすぼらしさが凄かった。「真面目にやって当たり前でしょ!」的なセリフの切り返しの早さとかヒステリックな言い方が凄い良かった。嗚咽シーンを見て俳優としての底力を見せつけられた気がした。
そして森優作や中村倫也がやってた「声にならない罵声」が印象的。自分はあまりやらないけど、感情が爆発しつつも押し殺そうとしてる感じが上手かった。
娘を失ったことで精神的に壊れてしまった母、気持ちは分かるが他者への言動が行き過ぎていたのも事実である。そして正義感とジャーナリズムの間で揺れ動く中村倫也。彼も母親に同情する一方、ジャーナリスト的な冷たさも共存していた気がした。誰が正しい訳でも無く、誰が悪い訳でもないような不条理な世界観がまたリアリティを高めていた。普通の映画のような100%良い奴など存在しない。
1番感心したのは、事件から半年のインタビューを撮影している時。「なんでもないようなことが幸せだったと思う」というセリフ、「完全にTHE虎舞竜のロードだ」と頭の隅で考えていたら劇中で「THE虎舞竜…」と見事に言い当てられた。それが狙いではあるんだろうけど、観客と思考を共有するような演出で唸った。

話のベースになっているのは山梨県で2019年に起きたキャンプ場での女児失踪事件だと思うが、あの事件も家族が誹謗中傷され実際に逮捕者も出ていた。つまりこの映画のような苦しみが実際に存在するわけである。その山梨の事件では結局失踪した女児は遺体で発見された訳だが、この映画は生死には触れていなかった。その点で言えば希望のある終わり方だったかもしれない。
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