柊

ミッシングの柊のレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.9
吉田恵輔脚本監督それだけで期待MAX。
たとえ主演女優の作品あまり見た事なくても…

99分から107分の中に名作が多い吉田作品。私の法則から少し外れてる。やっぱり少し無駄が多いかな。何が無駄かと言うと石原さとみのキレ演技が多すぎる。いつも切羽詰まっていて不機嫌でうんざりしてしまう。
100歩譲って、実際にこのような立場になったら,きっとこれが現実なんだろうけど、少し同じようなシーンを多様しすぎる。キレ演技がパターン化しているが故に既視感があるように感じるのもマイナス。
でもこういった作品に、少しでも批判的な事書くと炎上となるのかもしれないから面倒だけど、もちろん映像作品への感想だからそこはごっちゃにしないで欲しい。
しかし多少長いからと言って問題は何も解決しないし,糸口さえも見つかっていない。観てるこちら側に問題提起のみで終了。
もちろん提起された問題はどれも現代の厄介な闇と言える。無責任なマスコミ、誰もが簡単に誹謗中傷を垂れ流すSNS。これらはきっともっと問われるべき問題だと思う。

そして肝心の失踪に関しては、事故なのか?事件なのかもよく分からない。警察はこんなにも関わらないのか?テレビ局はこんなにも視聴率のために関係者と接触をするのか?そしてその映像は何の確証もなく視聴者の下世話な興味を刺激するだけが目的のように編集されるのか?組織の中でそれに抗う事もできない。清濁合わせ飲まなければこの世は回らないのか?

この作品は失踪事件の真相ではなく、それによる世間やマスコミのあり方を問うための作品なのだろう。関係なければ必死で探す被害者のビラを受け取る事もしない、勝手に作られた映像により加害者をでっちあげ攻撃をする。そして日々の中で解決などしなくても風化していく。そういった現象への警報なのだろうと思う。

だから結末はあれ以外に考えられないのだと思った。

そういった事を踏まえて、作品を見てみると何よりも凄いなと思ったのは、青木崇高の存在かな。妻のあれだけの八つ当たりを受け止め、静かに冷静に対応する。あそこまで関係が壊れても決して妻を見捨てない。なかなかないよ。だいたい被害者家族も結果として別れたりこじれたりするパターンがいかに多いか。
だからこそラストシーン、協力者の言葉に初めて感情が露わになる。どんなに娘に会いたいのか母親だけでなく、父親だって切羽詰まっている事に気づかされた。

懐の大きなこの夫がいたから、石原さとみのキレ演技に我慢できたと言っても過言ではない。私はね。
石原さとみの弟役の人も適材適所でいいし、彼は彼なりに姪っ子の事を心配している事が最後の方にわかったけれど、彼が幼い時に受けた事のトラウマとか、マスクをした女の子と中年の男を目撃した件とか確信には迫らないので余計な情報が後半にぶっ込まれたのが腑に落ちない。

石原さとみ確かにこれまでのキャリアを捨てたように頑張ったけど、張り詰めすぎて…かな。
柊