狩野大志かのうだいし

ミッシングの狩野大志かのうだいしのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

自分たちが普段流し見るようなニュースでも、現場では被害者がいて、それぞれ生きている人間が人生の局面に立っている。好き勝手その人たちに言うことは出来るけど、被害者にも生活はあり、ニュースでも切り取られた映像からしか見えてこない以上のものはずっとある。

娘が失踪したのは、自分の落ち度なのか、誰かのせいなのか、分からないままもがき続ける夫婦に見ていてずっと胃がキリキリし続ける。
それなのに、匿名の意見は悪を決めつけて、徹底的に叩き続ける。
劇中の夫みたいに、ネットの意見を「嫌なら見るな」っていう人がいるけど、自分に対して向けられてる刃物を見ずに見過ごすことは出来るのか?
僕は絶対無理だ。隅から隅まで見続けてしまう。怖いから。どれだけ鋭利な刃物なのか確認をしておかないと、安心して眠ることは出来ない。
しかしそんな夫も、最後は訴える、という至極真っ当な行動に出ていて良かった。

「2年後」のテロップが出たとき、正直びっくりした。娘が失踪した近辺の時代で終わるかと思っていたら、その先を描いてくれたからだ。しかし、その先で描かれてる日常も、ほぼ何も変わらないまま映画は終わる。
誰か登場人物がハッキリと死んではいないが、唯一、名もなき釣り人が死んで家族が泣いてる。そこにもこの夫婦と同じかそれ以上の人生の局面があったかもしれない。しかし、顔も映されない。
思えばモブのキャラクターもたくさん言い争いをしたり、喧嘩をしていた。
自分にとってはおおごとでも、他人にとってはどうでもいいことばかりで、この世界はこんなことの繰り返しだ。そんな世界の中、最後に光に照らされた石原さとみに僕は希望は感じた。