【吉田恵輔監督がダメなわけ】
吉田恵輔の映画は、前回の『空白』でも全然感心しなかったわけだけど、今回もダメでしたね。
こんなダメ監督がなぜ評価されるのか、私には全然分かりません。
この映画でも、幼いわが子が行方不明になったという苛酷な運命に陥った母親(石原さとみ)が、少なくとも映画の前半ではいかにも「嫌な女」「ダメ女」として描かれています。
自分の子供が行方不明になったのだから、平常心でいられないのは分かります。
分かるけど、でも、ネット上の中傷を、夫の忠告にもかかわらず見ないではいられない女って、自分も問題ありなんじゃないか、という気がしてくるんですよね。
そもそも、ネットでの中傷にしても、いかにも底が浅い。浅い人間が日本に少なからずいるのは事実ですけど、こういう設定は、すごく古いんだな。ネットが日常生活に入り込んでからすでに20年以上たっている。20年前の映画ならともかく、2024年の映画としては、「それしかできないの?」と言いたくなる。
そう、吉田恵輔の映画とは、「それしかできないの?」なんですよ。
『空白』がすでにそうだった。万引きして、反省もしないで逃亡して自動車にひかれて死ぬ女の子にしても、そのモンスター父親にしても、きわめて底が浅い人間でしかなかった。
そういう人間を嬉々として描いて、しかもモンスター父親が救われてしまう、というのが『空白』という映画だった。そんな映画を絶讃した日本人の底の浅さは、救いがたいと言うしかない。
今回のこの映画も、いくらかマシにはなっていますが、本質的に変わりはない。
吉田恵輔にできるのは、底の浅いバカを描くことだけ。
それは、吉田本人の底の浅さにつながっている。
それを見て取れない映画観客は、同様に底が浅いと言うしかないのです。
こういう映画をほめる評論家を含めて。