失踪した幼い娘美羽の帰りを待つ母沙織里は娘を探し続ける。
夫と協力して娘を探しているはずなのに温度差が生まれ、喧嘩が絶えない日々。
SNSには心無い言葉が書き込まれ、傷付き疲弊しても娘の有力な情報は見つからない。
娘が失踪してから取材を続けてくれるテレビ局の砂田を頼りながら、自力で娘を探す日々に出口はあるのだろうか。
娘が帰ってくるのであればどんな手段を使ってもいい。
周りが見えなくなるほど娘美羽のことを思い、追い詰められていく母沙織里役を石原さとみが熱演していて圧倒される。
今までのイメージと全く異なる役柄と演技で素晴らしかった。
誰にどう思われてもいいから娘だけは返して欲しいという悲痛な願いが伝わってきて苦しくなる。
弟との関係や夫との妙な距離感が現実的で、それぞれ辛いはずなのにどうしてもキツく当たってしまう沙織里の感情がリアルだった。
自分だけが悲しいなんて思っていないけれど、娘のために生きてきて少しの息抜きが一生の後悔になってしまうなんて、考えただけで恐ろしくて言葉を失う。
面白おかしく、都合よくメディアに取り上げられて辛い気持ちになっても諦めることなく娘のことを考えない日はない沙織里の姿を見ていると胸が締め付けられる。
後悔してもどうにもならない、ただ元気で生きていて欲しい、真実を知りたい。
様々な思いが交錯してどうにもならない思いを抱える母の辛さをこれ以上ないほど表現していて、いつどこで自分と向き合い前に進んでいくかを問われているように見えた。
壊れたという表現が重くて、家族や夫婦仲日常何もかもを変えてしまう出来事をどう受け止めるかを考えさせられる。
事実を取り上げていたとしても視聴率のために過激になる報道、その事実が面白いと感じる画面越しの人々。
どこでこんなにおかしくなったのか？そう感じてしまうような壊れた世界、便利な世の中になる一方で恐ろしい世界に変化しているように感じた。
