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ミッシングのmizuのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.6
吉田恵輔監督、最高傑作。

青木崇高、中村倫也、なにより森優作が素晴らしかった。

中村倫也演じる砂田の描き方が、吉田恵輔監督の優れて真摯な部分だと思った。

扱いは非常に小さいが印象的だったシーンがある。
2年後に飛ぶ前、砂田は取材の中で裏カジノを暴く。視聴率目的に、被害者家族が壊れかねない、として砂田は放送局の中でなんとかもがくが、力及ばず潰されてしまう。
その無力感で生きていた砂田は、2年後、非行少年少女の取材でゲームセンターにいた。「親はなにしてるの?」と聞いたところ、「刑務所にいる」と答える少女。やや遠慮したように、「もしよかったら、なにして捕まったのか聞いてもいいかな?」としかししっかりと取材する砂田は、打ちのめされることになる。
「裏カジノ?やってたらしくて、捕まったらしくて」

砂田の2年前の正義感は、放送をすることで「被害者家族が壊れかねない」という見えている範囲への憤りだった。それも正しいことだろう。しかし、自分が想像もしていないところで壊れているのかもしれない。あの時の砂田は、想像力の欠如していた2年前の自分を思い知って、打ちのめされたのではないか。

なにかを報道する、ということはそもそも暴力的なのだ、ということ。自分は生きているだけで加害性がある、ということ。しかしその中でも、最後には光をみせて終わる吉田恵輔監督。演出のバランスも今回はよかったと思う。素晴らしい作品でした。
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