誰しもみんな、過去の自分を恨んだり今の自分を哀れんだりして、「あの時こうすれば」「ああすれば」と終わりの無い虚像に浸る事があると思います。この作品もまた、そんな様々なifの世界を行き来するものです。
行き来するからと言って分かりずらい訳では無く、それぞれの世界線の主人公は、それぞれの異なる髪型や服装をしていて、把握しやすかったです。ちがった選択肢を手に取った、また別の主人公へと移る際の美しい切り替えが、とてもナチュラルで美しく印象的でした。
劇中に大きな木が少し映されるのですが、私たちの日々と通づるものがあると感じました。枝分かれするように、私達も色々な選択をして、出会って。花が咲くように楽しい出来事も、緑が茂るように満たされる時期も、枯葉が落ちるように辛く悲しい出来事もあって。全てを含んで人生だなと実感しました。
そして、この作品ではピアニストである主人公の演奏やオーケストラが楽しめます。
音も画も素晴らしいので、是非、普段交わるはずのない知らない人と同じ偶然を持ち寄って、同じ劇場という空間で楽しんで頂きたいです。
きっと、今、自分が歩んでいる人生もいいものなのかな？と、少しの誇りを抱けると思います！
