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ネクスト・ゴール・ウィンズのたのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

 実話をもとにした世界最弱の米領サモアのサッカーチームがパワハラと業績不振で追い込まれた鬼監督のコーチとともにW杯予選に挑むサクセスストーリー。去年公開の作品で例えるなら「グランツーリスモ」のサッカー版かつスポ根要素少な目コメディマシマシにしたのが本作品。
 個人的に一番惹かれたのは、主人公トーマスが鬼コーチになった背景であった。それは愛娘の交通事故による死別を引きずっていたからだ。自分と同様にサッカーが好きな娘。自分が娘を車で連れて行けば事故は起こらず生きていたかも、と自責の念に駆られる。ゆえに自分もサッカーも世界で一番嫌いになる。それが全て行動として表れてしまった。けれどもサモアの人たち(特にサッカー会長)は他人の幸せを願っている。そんなサモアの心に触れていくことで最後に自分と向き合って今ある目の前の幸せに気づくことができた。「人生にはサッカーよりも大切なことがある。」娘が残してくれた言葉をきっかけにトーマスは確実に前に踏み出すことができた。この作品はただのサクセスストーリーではなく、グリーフケアの側面をもった喪失と克服の物語でもあった。その伏線は少しずつちらつかせながら最後に見事きれいに回収したのは監督の手腕のすごさであろう。正直、タイカ・ワイティティのコメディギャグはあまり得意ではないが、今回はいい塩梅で演出されていた。いい作品でした。
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